今日の診療
治療指針
産婦人科

絨毛性疾患
gestational trophoblastic disease
徳永英樹
(東北大学病院准教授・婦人科)

頻度 あまりみない

ニュートピックス

・難治性絨毛性疾患に対してペムブロリズマブ,アベルマブのほか,camrelizumab/apatinib併用療法の有効性が報告されている.

治療のポイント

・希少疾患であり,化学療法は基幹施設・婦人科腫瘍専門医のいる施設での治療が望ましい.

・血中hCG値が基準値以下になってから単剤治療では1~3回,多剤併用療法では3~4回の治療の継続が必要である.

◆病態と診断

・絨毛性疾患は,妊娠性と非妊娠性に大別されるが,非妊娠性はきわめてまれである.

・妊娠性絨毛疾患は,非腫瘍性の胞状奇胎と腫瘍性の疾患を内包する.国際的な分類を踏まえつつ,本邦では胞状奇胎,侵入奇胎,絨毛癌,胎盤部トロホブラスト腫瘍(PSTT:placental site trophoblastic tumor),類上皮性トロホブラスト腫瘍(ETT:epithelioid trophoblastic tumor)ならびに存続絨毛症に分類している.これらはすべて胎盤栄養膜細胞の異型および増殖を呈する疾患である.

・胞状奇胎は,雄核発生の2倍体である全胞状奇胎(全奇胎)と2精子受精による3倍体である部分胞状奇胎(部分奇胎)に分類される.いずれも組織学的診断が必要である.p57Kip2 はインプリンティング遺伝子産物であり,父方のアレルでは発現が抑制されている.したがって,全奇胎では陰性を示し,部分奇胎では陽性を示す.水腫様流産も免疫染色では陽性になることに注意する.

・侵入奇胎は,胞状奇胎患者の10~20%に続発し,奇胎成分が子宮筋層に浸潤増殖する.肺転移を伴うことが少なくないが,化学療法によりほぼ全例寛解する.

・絨毛癌は,先行妊娠が正常妊娠であっても発生しうる悪性腫瘍である.肺,脳,肝などに血行転移しやすいが,多剤併用化学療法により90%程度は寛解する.

・PSTTとETTは,それぞれ胎盤着床部,絨毛

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?