今日の診療
治療指針
産婦人科

合併症妊娠(内科疾患)
medical complications during pregnancy
関沢明彦
(昭和大学教授・産婦人科学)

Ⅰ.先天性心疾患合併妊娠

頻度 よくみる(先天性心疾患を有する妊娠可能な女性は年々増加し,心疾患合併妊娠の割合は2~3%になる)

GL成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版)

◆病態と診断

A病態

・妊娠・出産に伴い心負荷は大きく変動する.例えば循環血漿量の変化は妊娠初期に始まり,妊娠28~32週に最大となり,非妊時の約1.5倍に達する.分娩時には子宮収縮に伴って300~500mLの血液が子宮から体循環へと移行する.分娩に伴う出血の影響で一時的な循環血液量が減少するものの,分娩後から産褥3日目には子宮収縮に伴った心臓への血液還流および子宮による下大静脈の圧迫の解除によって循環血液量が約1,000mL増加し,約4~6週間かけて妊娠前の状態に戻る.

・妊娠・出産による循環動態の変化を考慮したうえで,症例ごとに妊娠の可否について判断する.判断基準として,「成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版)」を参照されたい.

◆治療方針

A妊娠中の管理方針

 先天性心疾患をもつ女性に,妊娠前に心機能検査を行ってリスク評価を行うことは,妊娠中の心血管イベントの発生を予測するうえで有用である.また,そのリスク評価の結果,児への遺伝的影響,管理方針などをカウンセリングし,事前に十分に情報共有したうえで妊娠に臨むこと(プレコンセプションケア)が重要である.

 妊婦健診に加えて計画的に心臓超音波検査やNa利尿ペプチド測定などによる心機能検査を行う.評価の至適時期は妊娠初期,心負荷が最大に近づく妊娠26~28週,分娩前(36週頃)であるが,必要に応じて適宜行う.中等度以上の心疾患は精通した産科医,循環器医,麻酔科医などの多職種専門家チームの管理が必要である.先天性心疾患の母体から出生する児における先天性心疾患の罹患率は全体として5%程度とされる.そのため,妊娠中に超音波検査にて胎児心臓の構造異常を評

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?