今日の診療
治療指針
産婦人科

羊水量の異常
abnormal amniotic fluid volume
松本雅子
(浜松医科大学・産婦人科学)

◆病態と診断

A病態

1.羊水過少

・原因は多岐にわたり,母体要因,胎児要因,胎盤・臍帯・卵膜要因などがある.37週以降では生理的羊水減少が起こる.妊娠末期では,胎児機能不全による尿量低下や前期破水が原因であることが多い.

2.羊水過多

・原因は多岐にわたり,胎児の羊水嚥下・吸収障害,胎児の尿産生過剰状態,妊娠糖尿病または糖尿病合併妊娠,多胎妊娠などがあるが,6割は原因不明である.

B診断

・超音波断層法による半定量的評価を行う.

1.羊水過少

・羊水ポケットまたは最大羊水深度が2(cm)未満,あるいは羊水インデックスが5(cm)未満.

2.羊水過多

・羊水ポケットまたは最大羊水深度8(cm)以上,あるいは羊水インデックスが24(cm)または25(cm)以上.

◆治療方針

 いずれの場合も胎児の健常性(well-being)に留意する.

A羊水過少

 羊水過少の原因や出現時期により予後や管理方針は異なる.妊娠中期において超音波断層法で羊水腔が確認できないような重度の羊水過少の多くは,胎児異常をはじめとした予後不良な一群である.妊娠中期での前期破水による羊水過少に対して,人工羊水注入(AI:amnioinfusion)は,児の中・長期の予後改善効果を示す高いエビデンスは認めない.妊娠末期の前期破水症例に対してAIが,持続する変動一過性徐脈,臍帯動脈pH,胎児機能不全,7日以内の分娩,出生児の敗血症による死亡率などを改善させるとするエビデンスがある.分娩時に臍帯圧迫のリスクが想定される症例に対するAIには,児の短期予後が改善されるエビデンスがある.

B羊水過多

 出生前の原因診断が新生児予後の改善に寄与する場合があり,原因検索は重要である.治療方針は原因によって異なる.母体の症状軽減を目的に羊水除去を行う場合,破水,陣痛発来,感染,出血,胎盤早期剥離などの合併症のリスクがあることに留意する.



文献

1) 日本産科婦

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