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治療指針
産婦人科

妊娠高血圧症候群(HELLP症候群を含む)
hypertensive disorders of pregnancy:HDP(including HELLP syndrome)
入山高行
(東京大学医学部附属病院講師・女性診療科・産科)

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ニュートピックス

・欧州での国際共同治験およびわが国を含むアジア諸国で行われた共同治験の結果として,妊娠高血圧腎症が疑われる単胎妊婦において,可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)/胎盤増殖因子(PlGF)比の値により1週間以内の妊娠高血圧腎症/子癇/HELLP症候群の非発症および4週間以内の発症を予測する有用性が示された.sFlt-1/PlGF比の測定は2021年7月より保険収載されている.

治療のポイント

・妊娠高血圧症候群発症の予防のため,ハイリスク妊婦には,アスピリンの連日投与を行う.

・重症域高血圧(収縮期血圧≧160mmHgかつ/または拡張期血圧≧110mmHg)を繰り返し認めた場合,すみやかに降圧治療を開始する.

・過度な降圧では子宮胎盤血流の悪化による胎盤機能不全をきたす可能性があり,急性期の降圧治療中は胎児心拍数モニタリングを行う.

・子癇発症予防を目的とした硫酸マグネシウムを投与開始するタイミングに一定の見解はないが,重症域高血圧を繰り返し認める妊娠高血圧腎症の患者には投与を開始すべきである.

・著しい母体臓器障害,子宮胎盤機能不全,治療に抵抗する重症高血圧などを認めた場合,妊娠週数にかかわらず妊娠の終結が必要である.

・子癇発作の対応では,母体救命処置と,抗けいれん薬や硫酸マグネシウムの投与による発作の抑止を目指す.

◆病態と診断

A病態

・胎盤の初期形成過程において,絨毛外トロホブラストが脱落膜から子宮筋層に侵入し子宮螺旋動脈の内皮細胞および中膜が置換される,リモデリングという現象が起こる.妊娠高血圧腎症ではこの過程が障害され子宮螺旋動脈が細く抵抗が高いままとなり,絨毛間腔への母体血液流入が抑制される.その結果,胎盤は低酸素環境に曝され,トロホブラストでsFlt-1などの血管新生抑制因子が多量に産生され母体血中へと流入し,妊娠高血圧腎症の病態の本

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