頻度 よくみる(単胎で1,000分娩あたり5.9件,双胎で12.2件に発生する)
GL産婦人科診療ガイドライン産科編―2020
◆病態と診断
A病態
・常位胎盤早期剥離(以下,早剥)は分娩前に胎盤が剥離する病態を指す.原因はさまざまであり妊娠高血圧によるものや事故などで腹部を強打するものなどがある.
・図に危険因子を示すが,特に早剥の既往妊婦や子宮内感染,前期破水の頻度が高く,妊娠高血圧症候群の妊婦も厳重な注意を払うべきである.
・妊婦に早剥の症状について説明し,そのような症状が出ればすみやかに受診するように指導する.
B診断
・妊娠後半期に切迫早産様症状(性器出血・子宮収縮・下腹痛)と同時に胎児心拍数モニタリングで異常パターンを認めたときはまず早剥を疑うべきである.
・超音波にて胎盤後血腫や胎盤の肥厚が認められた場合は早剥である可能性がきわめて高い(特異度88%)が,超音波による陽性所見は感度が低い(25~60%)ため,陽性所見がないからという理由で早剥を否定すべきではない.
・重症になればDICをきたすため,血算・凝固系などの血液検査を必ず施行する.
◆治療方針
A治療のポイント:胎児
娩出前に胎盤が剥離するためにきわめて重篤な結果,すなわち子宮内胎児死亡や低酸素脳症による脳性麻痺の原因になりうるため治療は在胎週数にもよるがすみやかに娩出させることであり,胎児生存が確認されれば多くの場合帝王切開が選択される.
B治療のポイント:母体
子宮内圧が上昇することで急速に悪化するDICをきたす.そのため分娩時に大量出血をきたしやすい.治療はすみやかな胎児娩出と大量輸血である.したがって1次・2次施設では高次搬送のタイミングを考慮しつつ治療戦略を立てるべきである.
C子宮内胎児死亡をきたした常位胎盤早期剥離の分娩
胎児死亡をきたすほどの早剥はDICを合併していることが多い.したがって,安易に帝王切開すべきで