今日の診療
治療指針
産婦人科

胎児発育不全(子宮内胎児発育遅延)
fetal growth restriction(intrauterine growth restriction)
梅原永能
(国立成育医療研究センター・産科診療部長(東京))

ニュートピックス

・NO作動性血管拡張作用と抗炎症作用を併せもつ5型ホスホジエステラーゼ(PDE-5)酵素活性阻害薬や,低濃度で血管新生作用や抗炎症作用も併せもつHMG-CoA還元酵素阻害薬が,発症した胎児発育不全(FGR)に対する治療法として期待されている.

・妊娠初期の母体の血圧,血清蛋白,子宮動脈血流を用いた妊娠高血圧腎症(PE)スクリーニングでハイリスクと判定された妊婦に対し,妊娠16週前からの低用量アスピリン(LDA)内服はPEの予防だけでなくFGR予防にも有効であるとの報告もあり,日本においても今後の臨床導入が期待されている.

治療のポイント

・胎児発育不全(FGR:fetal growth restriction)は短期的には周産期死亡・長期的には神経学的後遺症のリスクが高いが,すでに発症したFGRに対する有効な治療法はない.

・そのためFGRでは,待機的管理による胎児状態悪化と妊娠終結による未熟性のバランスを勘案した分娩時期の決定が治療となるが,日本のガイドラインは管理方針についての記載に乏しい.

・本項では筆者らの行っているFGRの分娩時期の目安を示すとともに,既往FGRの再発率は20~25%程度と高頻度であることから再発予防法も示す.

◆病態と診断

・「産婦人科診療ガイドライン―産科編2020」によれば「FGRは胎児推定体重が胎児発育曲線を基準とし,-1.5SD未満の場合に判定する」とされ,全日本人に共通の発育曲線から診断する.

・原因検索により明らかな原因が判明することもあるが,多くは原因不明である.そのなかには体質的に小さい胎児と,胎盤機能不全により発育が障害された胎児(狭義のFGR)が混在している.前者は周産期予後正常であるため医療介入は不要だが,後者は周産期予後不良と関連し介入が必要なFGRである.

臍帯動脈(UA:umbilical artery)血流計測は古く

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?