今日の診療
治療指針
産婦人科

胎児水腫
hydrops fetalis
西郡秀和
(福島県立医科大学教授・ふくしま子ども・女性医療支援センター)

頻度 割合みる

治療のポイント

・胎児水腫の原因精査,胎児治療,出生後の新生児治療が可能な高次医療機関と連携する.

・新生児治療への移行を念頭に,胎児治療による副作用と胎児の状態・妊娠週数を加味した娩出を併せて考慮する.

◆病態と診断

A病態

・胎児の体腔内水分貯留と皮下浮腫を主徴とする.原因として,免疫性と非免疫性に大きく分類される.

・免疫性胎児水腫は,血液型不適合妊娠による.その機序として,母体抗体移行による胎児血液型抗原に対する溶血性貧血で発症する.

・非免疫性胎児水腫は,先天性感染,胎児心臓形態異常,胎児不整脈,胎児腫瘍,リンパ液灌流異常,双胎間輸血症候群の受血児,染色体異常などで発症するが,原因不明な特発性が多い.非免疫性胎児水腫の機序は,ヒトパルボウイルスB19感染などによる溶血性貧血,不整脈による右心系ポンプ機能低下,右心不全による静脈圧上昇,先天性嚢胞性腺腫様肺奇形や先天性横隔膜ヘルニアによる心臓圧迫/静脈還流減少など多岐にわたる.

B診断

・超音波断層法により,胎児の胸水腹水心嚢液皮下浮腫の所見を認める.

・胎児貧血は,非侵襲的な方法として,超音波パルスドプラ法で胎児中大脳動脈の最高血流速度(MCA-PSV)で評価する.MCA-PSV中央値の1.5倍は,中等度以上の貧血の可能性があり,胎児採血が考慮される.

・原因検索のため,母体の血液検査(血液型,不規則抗体,間接クームス試験,感染症),胎児の超音波検査/MRI検査(不整脈,心形態異常,心外臓器,胎児腫瘍,胎児付属器,双胎間輸血症候群など),胎児の染色体検査などを行う.

◆治療方針

 新生児治療への移行を念頭に,胎児治療による副作用と胎児の状態・妊娠週数を加味した娩出を併せて考慮する.胎児水腫と同様に,母体に著明な浮腫,胸水・腹水などの徴候(ミラー症候群)が出現することがあるので,留意する.

A胎児貧血

 胎児Ht値が30%未満

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?