今日の診療
治療指針
産婦人科

胎児機能不全
non-reassuring fetal status(NRFS)
桂木真司
(宮崎大学主任教授・産婦人科)

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ニュートピックス

・脳性麻痺事例では,CTG(胎児心拍数陣痛図)が分娩時の比較的長い時間で段階的に悪化していくもの,突発的な変化で急激に悪化するものが全体のそれぞれ16%を占めることがわかった.段階的に悪化していく場合では胎児に脳障害をきたすほどのアシドーシスになる前に介入することで,脳障害の発症を防げる可能性がある.

治療のポイント

・胎児アシドーシスの可能性と,さらに悪化する加速度に注意する.

・胎児低酸素・虚血の発生機序の原因の同定・改善に努める.主な原因は①母体の低酸素症,②子宮血流量低下,③子宮筋層を貫通する血流低下,④胎盤におけるガス交換障害,⑤臍帯血流障害,である.

・妊娠週数と胎児アシドーシスの可能性,および数時間・数日間での胎児機能不全の増悪傾向の有無,低酸素・虚血の原因を総合的に判断し,妊娠継続か児の娩出かを決定する.

・児の娩出方法には経腟分娩と帝王切開があり,母児双方の臨床病態,子宮口開大の程度によって最適な分娩方法を決定する.

・未熟児の管理,重症妊産婦の管理には,マンパワー,医療資源が必要なことが多く,母児の状態が急激に悪化する前に高次施設への迅速な搬送を判断することも重要である.

◆病態と診断

A病態

・急性の胎児機能不全の原因:臍帯脱出,子宮破裂,常位胎盤早期剥離,羊水塞栓症,前置胎盤の出血.

・亜急性の胎児機能不全の原因:母児間輸血症候群,胎児水腫,子宮内感染,双胎間輸血症候群.

・慢性の胎児機能不全の原因:児の染色体異常,児の先天異常,胎児発育不全,子宮奇形,臍帯辺縁付着など.

・母体の合併症によるもの:妊娠高血圧症候群,コントロール不良な糖尿病合併妊娠,SLEなどの自己免疫疾患.

B診断

・胎児心拍数モニタリング波形がレベル1~3に相当する場合を胎児機能不全とする.

・胎児心拍数波形分類とその対処については日本産科婦人科学会/産婦人科医会「産婦人科診療ガ

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