今日の診療
治療指針
産婦人科

子宮内胎児死亡
intrauterine fetal death(IUFD)
金西賢治
(香川大学教授・周産期学婦人科学)

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治療のポイント

・子宮内胎児死亡は,基本的には超音波検査による胎児心拍動の消失をもって診断する.

・子宮内胎児死亡を診断した場合,原因検索と死亡時期を推定し,確定された妊娠週数に沿った胎児娩出方法を選択し,できるだけ早期の胎児娩出をはかる.

・妊産婦,その家族の精神面に配慮したメンタルヘルスサポートが必要である.

◆病態と診断

A病態

・産科婦人科用語集で子宮内胎児死亡とは「妊娠持続期間を問わず,子宮内で胎児生存が確認された後,母体,胎児,胎児付属物の何らかの原因で,胎児の心拍動が消失し死亡したものをいう」と定義されている.

・妊娠22週以降の子宮内胎児死亡の約25%は原因不明で,常位胎盤早期剥離が17%,胎児形態異常が16%,臍帯因子が15%と報告されている.

・原因として母体因子として妊娠高血圧症候群,妊娠糖尿病などハイリスク妊婦や不規則抗体,抗リン脂質抗体の存在,初期のウイルス感染などが挙げられ,胎児因子として染色体異常を含む胎児形態異常,臍帯因子などが挙げられる.

・いずれにしても,娩出児の外表奇形の確認,胎盤も含めた病理学的検索や,臍帯血や胎児組織のウイルス検査や染色体検査などを提案し,原因検索を行うことが次回妊娠を考える場合にも有用である.

・死亡胎児が子宮内にとどまる影響により,母体にDICが発症する死胎児症候群の報告があり,その頻度は低いと考えられるが早めの娩出と凝固異常の出現には注意する.

B診断

・妊娠初期であれば経過観察時の超音波検査で,妊娠週数が進んだ場合は胎動減少の自覚,胎児心拍数モニタリング異常を契機に胎児心臓の超音波検査などで心拍動の消失として診断される.

◆治療方針

 母体の状態,合併症や血液凝固異常の有無に留意し,妊娠12週までは待機的管理あるいは外科的流産処置を行う.妊娠12週以降は胎盤の位置を確認し子宮頸管拡張器などを用い子宮頸管拡張を行ったのち,妊

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