今日の診療
治療指針

新生児搬送
neonatal transport
石原千詠
(鹿児島市立病院・新生児内科科長)

A概要

 新生児搬送には地域の医療施設間で実施される出生直後の新生児の緊急搬送以外に,高度医療施設への緊急および予定搬送,ならびに搬送を担った医療施設以外への三角搬送,状態の安定した児の戻り搬送などがある.地域,施設によりその頻度,需要は異なるが「地域医療の集約化」と「高度医療の集約化」に新生児搬送は不可欠であり,医療施設間の日頃からの連携が非常に重要となる.

 出生前にハイリスク新生児の出生が予測される症例では,母体搬送を行い,出生後の新生児搬送に伴う呼吸・循環,体温の変動などの悪影響を回避したい.

 災害時の広域搬送では,災害派遣医療チーム(DMAT:disaster medical assistance team)と協力し,限られた周産期医療資源の有効活用が必要である.

B搬送手段

 搬送手段は搬送の距離・所要時間と緊急度,搬送時間帯,天候に応じて選択する.

 一般的な救急車両,新生児専用ドクターカー,ドクターヘリに加え,地域により新幹線,一般航空機,自治体の防災ヘリ,海上保安庁や陸上・海上・航空自衛隊のヘリおよび海上保安庁船舶,航空自衛隊機(機動衛生ユニット)などが使用される.

 陸路搬送は全国で実施されるが,陸路搬送に距離・時間を要する地域では緊急度に応じてドクターヘリなどの空路搬送が選択され,病院到着時の新生児の予後推定スコア〔SNAPPE(Score for Neonatal Acute Physiology with Perinatal Extension)-Ⅱスコア〕の同等性,時間短縮効果,早産児における脳室内出血(IVH:intraventricular hemorrhage)発症頻度減少に伴う予後改善効果,費用対効果で空路搬送の有用性が報告されている.

 鹿児島県,長崎県,沖縄県,島根県などでは離島からの緊急搬送,特に夜間,悪天候時には自衛隊が活躍している.

C搬送前・

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