治療のポイント
・妊娠33週までの早産が1週間以内に予想される場合,児の呼吸窮迫症候群(RDS)発症予防のため経母体ステロイド投与を行う.
・蘇生室で出生後早期から持続気道陽圧(CPAP)管理を積極的に行う.
・診断がついたら,人工肺サーファクタントをすみやかに投与する.
◆病態と診断
A病態
・RDSは肺の未熟性に伴う肺サーファクタント欠乏により肺胞が虚脱する疾患である.
・肺サーファクタントは在胎20週よりⅡ型肺胞上皮細胞から産生され,35週頃より十分な量を肺胞内に分泌できるようになる.早産で産生が不十分であったり,仮死,低体温などで産生が抑制されると発症頻度が高まる.
B診断
・診断は進行する呻吟,多呼吸,陥没呼吸,チアノーゼなどの呼吸窮迫症状とマイクロバブルテスト(SMT:stable microbubble test),胸部X線写真などで行う.
・SMTは肺サーファクタントの活性を調べる簡便な検査で,検体が胃液であれば100倍検鏡下で直径15μm未満のマイクロバブルの数が10個/mm2 未満の場合,RDS発症の可能性が高まる.
・胸部X線写真では肺容量の低下,網状顆粒状陰影,気管支透亮像が認められる.重症度評価にはBomsel分類が用いられる.
・そのほか,肺超音波検査,羊水・胃液のラメラ体測定を行っている施設もある.
◆治療方針
A経母体ステロイド投与
33週までの早産が予測される母体にベタメタゾン12mgを24時間ごとに2回筋肉注射する.経母体ステロイド投与はRDSを相対危険度で0.66(95%信頼区間0.56~0.77)倍に低下させる.
B蘇生室でのCPAP
出生直後から持続気道陽圧(CPAP:continuous positive airway pressure)管理を行うことにより,機能的残気量の低下した肺に対して気道陽圧を与えて肺胞の虚脱を防ぐことで人工肺サーファクタント投与や人工