今日の診療
治療指針

新生児遷延性肺高血圧症
persistent pulmonary hypertension of the newborn(PPHN)
伊藤裕司
(国立成育医療研究センター・副周産期・母性診療センター長(東京))

頻度 (米国カリフォルニア州でのpopulation based study では,先天性心疾患を除外した34週以上の新生児でのPPHNの頻度は0.2%と報告されている)

治療のポイント

・無用な刺激を避け,鎮静薬を使用して,肺高血圧発作を誘発しないような管理を行う.

・酸素投与や適切な人工呼吸管理を行い,volume expanderの投与(容量負荷)やカテコラミンなどを使用して,血圧を維持する.

・NO吸入療法などの肺血管拡張薬・肺血管拡張療法を行う.

・OIなどを指標にして,ECMOなどのさらなる高度な治療が必要な場合には,ECMOが可能な高度医療施設への転院を考慮する.

◆病態と診断

A病態

・新生児では,出生後,呼吸の開始により血中酸素分圧が上昇し,肺血管抵抗が低下し,肺血流が増加し,胎児循環から新生児循環へ移行する.このような胎児循環から新生児の循環への移行が,何らかの原因により,肺血管抵抗の低下が起こらず,肺高血圧が遷延し,そのために,肺血流が減少し,卵円孔や動脈管での右左シャントが持続して体循環の血液の酸素分圧の低値が持続する.このような状態を,新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)とよぶ.

・この状態を引き起こす病態や疾患としては,胎児期の動脈管の早期閉鎖,妊娠早期の前期破水や胎児腎疾患による羊水過少に伴う肺低形成,肺低形成を伴う先天性横隔膜ヘルニアや先天性肺気道奇形,生後の呼吸窮迫症候群,胎便吸引症候群,気胸や気縦隔,肺炎や敗血症,肺発生の異常であるalveolar capillary dysplasia(ACD)などがある.

B診断

・動脈血の酸素化の低下(PaO2 やSpO2 の低下),特に,post-ductal SpO2(下肢のSpO2)が低下し,pre-ductal SpO2(右上肢のSpO2)に比してpost-ductal SpO2 が低値という較差が生じる.

・さらに

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