頻度 (在胎28週未満の早産児の約半数)
GL科学的根拠に基づいた新生児慢性肺疾患の診療指針(改訂2版)(2010)
治療のポイント
・薬物療法のみならず呼吸管理や栄養管理など総合的な全身管理が予防に必要である.
・重症例にはステロイド全身投与を行う.
◆病態と診断
A病態
・早産児の未熟な肺をベースとし,絨毛膜羊膜炎などの子宮内炎症,無気肺,長期の人工換気,感染の反復などが肺を傷害し生じる.
B診断
・在胎32週未満の児では,生後28日で酸素が必要かつ修正36週の時点で酸素投与または呼吸補助を要する状態のうち,先天奇形を除く肺の異常を伴ったものと定義される.
・日本では胸部X線のびまん性泡沫状陰影を重視している.
◆治療方針
A人工呼吸管理
特定の呼吸器モードが優れているという十分なエビデンスはないが,自発呼吸の程度,肺の状態,日齢(修正週数)などを鑑みながら呼吸器モードを使い分ける.
B栄養管理
母乳は抗炎症作用があり予防効果がある.過剰な水分負荷なしに適切な体重増加を得るため,母乳強化剤や中鎖脂肪酸(MCT)オイルを併用する.
胃食道逆流による誤嚥を予防するため,経十二指腸チューブで経腸栄養を行う.
C薬物療法
カフェイン,ステロイド吸入を予防的に使用する.ステロイド全身投与は,酸素需要の増悪など呼吸状態悪化時に使用する.
カフェインは1回換気量や肺コンプライアンスを上昇させ,さらに抗炎症作用もあり予防効果を有する.ステロイド吸入は,抗炎症作用による予防効果を有するが小さい.ステロイド全身投与は,抗炎症作用,サーファクタント合成の増加,抗酸化物質の増加などにより予防,治療効果を有する.デキサメタゾンは長期的な神経予後不良に関連すると報告されているため,ヒドロコルチゾンが主に使用されるが,効果はデキサメタゾンより下がる.
Px処方例 1)と2)を予防的に用いる.呼吸状態悪化時は3),4)のいずれかを
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