今日の診療
治療指針

新生児の敗血症,髄膜炎
neonatal sepsis(NS) and meningitis
太田栄治
(福岡大学病院准教授・総合周産期母子医療センター新生児部門)

治療のポイント

・発症の時期と母体リスクや児の環境により原因菌や併発症を予測する.

・新生児は短時間で重症化しやすいため,疑った時点で血液培養や髄液培養などを採取し,できるだけ早く経験的治療を開始する.

◆病態と診断

A病態

・新生児敗血症(NS)は,哺乳不良やなんとなく元気がないなどの非特異的症状で発症することが多い.

・新生児(特に早産児)では,成人と異なり全身性炎症反応症候群や臓器障害を評価する明確な指標がない.

・発症時期が生後72時間未満を早発型(EONS:early-onset NS),それ以降を遅発型(LONS:late-onset NS)と分類する.

・EONSは肺炎を併発しやすく,LONSは髄膜炎や尿路感染症(UTI)を併発しやすい.通常,生後72時間未満にUTIを発症することはない.

・起炎菌:EONSでは,B群溶連菌(GBS)と大腸菌が大半を占めるが,リステリア菌なども考慮する.LONSでもGBSや大腸菌が多いが,新生児集中治療室における院内感染では,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が多く,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌や緑膿菌などの耐性菌,真菌なども考慮する.

B診断

・NS診断のゴールドスタンダードは血液培養であり,体重1,000g以上であれば1ボトルあたり最低0.5mL(できれば1mL以上)の2セット採取を試みる.

・血液量が足りない場合は,好気ボトルを優先する(起炎菌として嫌気性菌が少なく,真菌などの多くの菌が好気ボトルで発育可能).

・髄膜炎が疑われる場合は治療開始前に髄液検査を実施すべきであるが,全身状態がきわめて不安定である場合は,治療開始後に検討する.

・血液検査では,白血球数>20,000/μLあるいは<5,000/μL,CRP>2.0mg/dL(<1mg/dLでは陰性的中率が高い)を参考にする.

◆治療方針

A経験的治療

Px処方例 下記を適宜組み合わせて用いる(日齢7まで

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