今日の診療
治療指針

新生児肝炎
neonatal hepatitis
伊藤孝一
(名古屋市立大学・新生児・小児医学分野)

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ニュートピックス

・小児期発症の胆汁うっ滞性肝疾患を対象とした多施設前向きレジストリ研究(CIRCLe:Comprehensive and Informative Registry system for Childhood Liver disease)が2021年から進行しており,未診断の小児胆汁うっ滞の特殊検査(網羅的遺伝子解析など)を一括実施している(https://www.circle-registry.org).

治療のポイント

・新生児肝炎のほとんどは自然治癒し,疾患特異的治療薬は存在しない.

・栄養療法と脂溶性ビタミンの補充が治療の柱である.

・ビタミンKを適切に補充し,頭蓋内出血を確実に予防する.

◆病態と診断

A病態

・新生児・乳児期に胆汁うっ滞をきたす病態は,胆道閉鎖症,感染症,代謝・内分泌疾患,遺伝性胆汁うっ滞症など,多岐にわたる.このうち,病因が明確でない疾患群が新生児肝炎である.

・その機序には胆汁分泌機能の未熟性(特に早産児),経静脈栄養,虚血・低酸素などが関与すると考えられている.

B診断

・白色便や,生後2週間以上遷延する黄疸を認める場合は,胆汁うっ滞の存在を疑う.

・胆汁うっ滞のマーカーである血清中の直接型および抱合型ビリルビンを測定する.

直接ビリルビンが異常値(1.0mg/dL以上)であれば原因精査を行う.

・直接ビリルビンが2.0mg/dL以上の場合は,すみやかにプロトロンビン時間(PT)を測定する.

・胆道閉鎖症やその他の胆汁うっ滞性疾患が除外されれば新生児肝炎の診断に至る.

◆治療方針

A血液凝固障害に対する治療

 PTの異常を認める場合はビタミンK製剤を静注する.

Px処方例

 メナテトレノン(ケイツーN)注 1回2~5mg 1日1回 静注

注意 アナフィラキシー反応を惹起することがあるので,ゆっくりと静注する(筋肉内注射は禁忌).

B栄養療法

 経口摂取

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