今日の診療
治療指針

早産児の貧血
anemia of prematurity
大森さゆ
(さいたま市立病院・小児保健科科長)

頻度 〔極低出生体重児(体重1,500g未満)には治療を要する貧血が必発である.ヘマトクリット(Hct)の最低値は超低出生体重児21%,極低出生体重児では24%である〕

GL新生児に対する鉄剤投与のガイドライン2017

治療のポイント

・早産児の貧血予防として最も重要なことは,採血量を減らす努力である.

・新生児に輸血を行う際には院内で輸血用血液を安全に分割し,ドナーを削減することに努める.

◆病態と診断

A病態

・出生により血中酸素濃度が増加するため,エリスロポエチン(EPO)産生の低下,赤血球形成の抑制が起きる.正期産児では,Hb10g/dLを下回ることはまれである(生理的貧血).しかし早産児の場合,Hbはより顕著に低下する.

・早産児の貧血は,発症時期と病因により,早期貧血(生後4~8週)と晩期貧血(生後3~4か月)に大別される.

1.早期貧血

・EPOの産生の抑制,頻回の採血,早産児の赤血球寿命が短いことが原因である.

2.晩期貧血

・成長による循環血液量増大に対する貯蔵鉄の絶対的な不足が原因である.

B診断

・検査所見:Hb10g/dL未満,網状赤血球数低値,正球性正色素性貧血.

C症状

・頻脈,無呼吸の増加,体重増加不良,酸素必要量の増加,血清乳酸濃度の上昇.

・緩徐に進行した場合は無症状のこともある.

◆治療方針

A濃厚赤血球輸血

 極低出生体重児ではHbの低下が臨床症状と関連している可能性があり,症状がある場合は輸血が必要である.

 無症候性の乳児における赤血球輸血の基準は明確なものはないが,網状赤血球<100,000/μL(<2%),HCT20%未満,またはHb7g/dL未満.

Px処方例

 濃厚赤血球輸血 1回10~15mL/kg

B鉄剤

 経腸栄養が100mL/kg/日を超えた時点で,経口鉄剤を開始する.体重2,500gで経腸栄養が十分となれば中止可である.投与中止後も発育や栄養状態を引き続き観察し,

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?