今日の診療
治療指針

乳幼児突然死症候群(SIDS)と乳幼児突発性危急事態(ALTE)
sudden infant death syndrome,apparent life-threatening event
溝口史剛
(前橋赤十字病院・小児科副部長)

Ⅰ.乳幼児突然死症候群(SIDS)

ニュートピックス

・ICD-11発効を控え,2018年に第3回国際乳幼児/小児突然死会議(レッドクリフ会議)が開催され,これまでの分類で独立していたSIDSを「Unexplained sudden death in infancy or Sudden Infant Death Syndrome」とし,死亡状況調査や剖検を詳細に行っても説明がつかない一群としてまとめる新たな分類法が提唱された.

・令和4(2022)年度からの厚生労働科学研究で,診断基準改訂作業が開始される予定である.

・SIDSを含めた小児の死因究明向上や予防可能な小児死亡を減らすためのチャイルド・デス・レビュー(CDR)制度創設に向け,令和2(2020)年度よりモデル事業が行われている.

◆病態と診断

A病態

・「脆弱性を有する児」,「発達臨界期」,「外的ストレス」の3要因が一時に重なりあって発症するとされている(トリプルリスクモデル).

・突然に死亡し,不慮の窒息/不詳/SIDSと診断される乳児の頻度は,本邦で出生1,000対で約0.3であるが,臨床医はいずれも現場検証を含めた包括的評価のため,警察に届出を行う必要がある.

B診断

・正確な診断のため「乳幼児突然死症候群(SIDS)診断のための問診・チェックリスト」(web上で容易に入手可)を用いた情報収集と情報共有を行い,臨床現場でも可能な限りの諸検査と検体保存を行う.

・解剖が行われない場合,SIDSの診断は不可能であり,「不詳」とせざるを得ない.

・ただし,たとえ解剖を行ってもSIDSと窒息の鑑別は困難で,本邦では乳児突然死の約6割が不詳とされ,SIDSの診断割合は3割にとどまる(ただしこの割合は世界的にきわめて低く,また都道府県での差異がきわめて大きい状況にある).

◆治療方針

 SIDSの予防対策として,①母乳栄養,②親の禁煙,③仰向け寝

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