今日の診療
治療指針
小児

小児における抗菌薬療法
antimicrobial therapy in children
齋藤昭彦
(新潟大学大学院教授・小児科学)

治療のポイント

・抗菌薬は細菌感染症に対する治療であり,ウイルス感染症には使用しない.

・抗菌薬を処方する際には,感染臓器とそこに感染する細菌を考えてから抗菌薬を選択する.

・抗菌薬の適正使用とは,抗菌薬の必要な患者に対して,適切な抗菌薬を適切な投与量と回数で,適切な期間投与することである.

・薬剤耐性(AMR:antimicrobial resistance)が世界中で大きな問題となっている現在,未来を担う子どもたちへの抗菌薬の適正使用は最も重要な課題である.

A小児における抗菌薬使用の原則

 小児において,感染症疾患の頻度は高いが,その多くがウイルス感染症であるので抗菌薬の効果は限られている.

 小児では,症状,全身状態,身体所見,sick contactの有無や,必要があれば適切な検査を行い,ウイルス感染症と細菌感染症を鑑別する.細菌感染症の可能性があり,抗菌薬治療の適応があれば,適切な治療薬を用い,適切な投与量と回数,投与期間で治療する.

 一方で,患者の重症度が高い場合は,初期治療薬として,考えられる細菌を幅広くカバーしておかなくてはいけない.その際に常に考えるのが,感染症診療のトライアングルである().

 まず最初に病歴や身体所見,検査所見から,感染している可能性のある感染臓器を想定する.そして,その臓器からの培養検体(尿,喀痰,咽頭,髄液,血液など)を採取する.次に,患児の年齢と感染臓器から主な起因菌を想定する(の①).最後に,その起因菌に対する適切な抗菌薬を選択する(の②).その際,その抗菌薬の感染臓器への組織移行性を検討する(特に中枢神経系など)(の③).

 いったん抗菌薬が決まれば,適切な量と間隔で,適切な期間投与する.また,培養の結果が出た時点で,可能な限り狭域な抗菌薬にdeescalationし,治療を完結する.

B小児における細菌感染症とその起因菌

 小児の細菌感

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