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治療のポイント
・嗄声,犬吠様咳嗽,吸気性喘鳴を主訴とするウイルス感染症である仮性クループが最も多く,重症度に合わせた治療を行う.
・細菌性気管炎,喉頭蓋炎,気道異物などの気道緊急症との鑑別を常に意識する.
◆病態と診断
A病態
・クループ症候群は喉頭の狭窄,閉塞による吸気性喘鳴,咳,嗄声をきたす症候群の総称で,喉頭炎,喉頭蓋炎,喉頭気管炎(仮性クループ),痙性クループ,喉頭ジフテリア(真性クループ)などに分類される.上気道の狭窄・閉塞の程度により,軽症から気管挿管を要する症例まで重症度の幅が広い.
・ウイルス性の喉頭気管炎である仮性クループが最も多い.
・パラインフルエンザ1型が最多で,次いでRSウイルス,ライノウイルスである.インフルエンザウイルス,新型コロナウイルス(オミクロン株)も原因となる.
・頻度は低いが,細菌性の喉頭蓋炎や気管炎がある.
・喉頭蓋炎はインフルエンザ菌b型が重要な起炎菌だが,Hibワクチンによりかなりまれになった.気管炎の原因は黄色ブドウ球菌が最も多く,気管ファイバーではとめどない膿の排泄がみられる.
B診断
・診断は臨床的に行う.
・鼻汁鼻閉,咳嗽などの感冒症状を前駆症状として認めることがある.
・夜間に犬吠様咳嗽と吸気性喘鳴を認めた場合に疑う.
・ほかの吸気性喘鳴をきたす疾患(異物誤飲,乳児再発性呼吸乳頭腫,急性血管神経性浮腫,気管炎,喉頭蓋炎,喉頭軟化症,気管軟化症)の可能性も常に考慮する.
・喉頭蓋炎では,急激な発熱,強い咽頭痛,嚥下困難,流涎,こもった声などを認め,嗄声は少ない.トライポッドポジションをとることもある.
・仮性クループの診断に頸部単純X線が与える情報は少ないので,上述の鑑別疾患を疑う場合や非典型的な症例を除き,必要ない.
・仮性クループの重症度分類にはWestley scoreが最も使用されている(図).軽症≦2点,中等症3~7点,重症≧8