今日の診療
治療指針
小児

肥厚性幽門狭窄症
hypertrophic pyloric stenosis
渡辺稔彦
(東海大学教授・小児外科学)

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治療のポイント

・脱水と代謝性アルカローシスに対するすみやかな輸液治療が重要である.

・超音波検査で診断を確定する.

・内科的治療と手術の選択肢があり,十分な情報提供が必要となる.

◆病態と診断

A病態

・胃幽門筋の肥厚により幽門管が狭くなり,胃内容の通過障害をきたす疾患である.

・新生児期早期から数か月の間,多くは1か月前後に無胆汁嘔吐が出現する.

・嘔吐の回数が徐々に増加して,特徴的な噴水状嘔吐となり,脱水・低栄養から体重減少がみられる.

・胃液中のH やCl,K を喪失して,低K性低Cl性代謝性アルカローシスを呈する.

・発症頻度は出生1,000人あたり1~2人程度で,男女比は4:1と男児,特に第1子に多い.

・遺伝的要因の関与のほか,マクロライド系抗菌薬,経鼻空腸チューブ留置などが誘因となる.

B診断

・発症年齢と噴水状の無胆汁性嘔吐の症状から,本症の可能性を念頭におく.

・上腹部の腹壁から胃の蠕動運動が観察できることがある.

・上腹部に幽門筋の肥厚部をオリーブ様腫瘤として触知できるが,習熟を要する.

超音波検査が最も精度が高く,短軸で4mm以上の幽門筋肥厚と,長軸で15mm以上の幽門管長が認められれば診断が確定する.

・胃内容の通過障害の有無も副次的な所見として有用である.

◆治療方針

A輸液療法

 初期治療として,経鼻胃管を挿入して胃内の減圧をはかること,輸液療法を行い脱水と代謝性アルカローシスを改善することが先決である.

Px処方例 まず1)を用いる.利尿が得られたあとは2)を用いる.

1)生理食塩液:5%ブドウ糖液=1:1の混合液10~20mL/kg/時 急速静注

2)生理食塩液:5%ブドウ糖液=2:1の混合液 1日150~200mL/kgで維持輸液K濃度を20mEq/Lになるように調整

‍ ●治療の変更の指標 尿量が1mL/kg/時以上,BE2.5mEq/L以下,Cl95m

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