今日の診療
治療指針
小児

乳幼児嘔吐下痢症
acute gastroenteritis in infants
笠井正志
(兵庫県立こども病院・感染症内科部長)

頻度 よくみる

GL抗微生物薬適正使用の手引き 第二版(2019)

GL小児急性胃腸炎診療ガイドライン(2017)

ニュートピックス

・日本では,2011年1月よりロタワクチンの任意接種,2013年10月より基幹定点からのロタウイルス胃腸炎の患者届出が始まり,2020年10月より定期接種化されている.小児科定点サーベイランスでは2021年シーズンは大きな流行を認めていない.

治療のポイント

・最初に重要なのは重症度の判断であり,重症度に最も影響するのが脱水の有無と程度である.

・経口補水液(ORS)は,乳幼児嘔吐下痢症による脱水予防と軽度から中等症の脱水に対する世界標準の治療法である.

・原因がウイルス性の場合,抗菌薬は不要である.

◆病態と診断

A病態

・本邦では乳幼児嘔吐下痢症の原因は,ウイルス性がほとんどである.一方で,40℃以上の発熱,粘血便,強い腹痛の存在は,原因として細菌性を疑うポイントとなる.上気道症状を伴うものは20%で,その場合はウイルスが原因であり,逆に感冒,インフルエンザや突発性発疹症に数%~数十%程度消化器症状をきたす場合がある.

B診断

・胃腸炎診断は除外診断を主とし,季節,周囲の疫学,曝露情報と症状(下痢のタイプなど)から診断する臨床診断である.

・胃腸炎の原因微生物がウイルス性という蓋然性が高い場合は,細菌培養のみならず,抗原検査を代表とするウイルス検査は原則無用である.原因ウイルスがわかることで,アウトブレイク時の疫学情報となることや,ある程度の経過予測ができるというメリットがある.一方,病原体が見出されても,不顕性の場合や病気と直接関係ないこともある.逆に,検査陽性になることで診断を早期閉鎖することになり,重篤な疾患を見逃す可能性にもつながるので,ガイドラインでも推奨されていない.

◆治療方針

 年齢と病態に応じた鑑別疾患を念頭におきつつ生理学的評価を行い,脱水と判断した

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