今日の診療
治療指針
小児

乳児難治性下痢症
chronic diarrhea in infancy
陶山友徳
(済生会横浜市東部病院・小児肝臓消化器科)

治療のポイント

・乳幼児の下痢の原因は多岐にわたる.下痢の原因を病態別に把握し,それに則った治療を行う.

・乳幼児では,下痢が遷延することにより成長発達の遅れにつながる.したがって,栄養状態や発育障害の是正をすみやかに行うことが重要である.

・消化管を使いながら治療することが重要であるが,必要栄養量の確保のために中心静脈栄養を併用する.

◆病態と診断

A定義

・乳児難治性下痢症とは,古典的には3か月未満の乳児に発症する原因不明の2週間以上持続する下痢で,かつ便培養で病原菌が検出されないものと定義されている.

・最近では2週間以上持続する下痢を,広義の難治性下痢とよぶことがある.

B病態

・広義の難治性下痢の原因として頻度の高い疾患としては,腸炎後症候群,2次性乳糖不耐,消化管アレルギーが挙げられる.そのほかにも,免疫異常,消化吸収障害,内分泌疾患,形態異常など原因は多岐にわたる.

C診断

・病原体の有無を確認する.

・48時間経口摂取を禁止して,下痢が止まるかどうかを観察する(絨毛萎縮をきたすので,2日以上は経口摂取を止めない).下痢が止まらない場合は,分泌性下痢の病態を考慮する.

・便検査(脂肪・潜血・pH・電解質),血液検査(栄養状態やアレルギーの評価),超音波やCT,消化管造影,粘膜生検を含む消化管内視鏡などを病態に応じて行う.

・感染性胃腸炎など罹患後に,2週間以上の下痢が持続する場合は,腸炎後症候群もしくは2次性乳糖不耐を疑う.便中還元糖検出(クリニテスト)が発売中止となったため,現在は使用できない.便の強い酸臭は2次性乳糖不耐を強く疑う所見である.

・原因となる食物を摂取すると下痢などの症状を呈するときは,消化管アレルギーを考える.

・その他,遺伝学的検査が診断の一助となることがある.

◆治療方針

 原因疾患により治療法はさまざまであるが,まずは脱水や電解質の評価を行い,適宜補正する.また慢性の下

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