今日の診療
治療指針
小児

消化管異物
foreign body in the gastrointestinal tract
古田繁行
(聖マリアンナ医科大学主任教授・小児外科)

頻度 あまりみない(2018年の調査では10万人対4人)

治療のポイント

・緊急処置の可能性がある消化管異物は,食道異物,ボタン電池(特にコイン型リチウム電池),鋭利な異物(釘,鋲,ヘアピン,魚骨など),磁石(複数の磁石,金属+磁石),高吸収性樹脂製品である.

◆病態と診断

A病態

・一般的に6歳未満が多い.

・異物としては,硬貨,磁石,ボタン電池,玩具などが多い.

・食道を通過すればほとんどが自然に排泄されるが,10%程度は摘出が必要になる.

B診断

・摂取した異物の種類と大きさ,摂取からの時間,最終の食事時間,既存の病気の存在など,詳細な病歴を取得する.

・無症状であっても,異物摂取が疑われる場合はX線評価を推奨する.必要に応じて頸部,胸部,腹部など,正面,側面のX線で確認する.

・症状の存在,異物の位置および種類で緊急度が決まる.

◆治療方針

 症状,異物の位置・種類で治療方針が異なる.

A食道異物

 異物の種類や大きさと関係なく,全例摘出する必要があるが,閉塞の症状がない遠位食道の小さな硬貨などは自然落下する可能性がある.異物の摂取から24時間以内に摘出する必要があり,遅延すると穿孔のリスクが高まる.

Bボタン電池

1.食道

 緊急(<2時間)に摘出する.

2.胃

 症状がある場合,および/またはメッケル憩室などの消化管に既知または疑われる疾患がある場合も緊急に(<2時間)摘出する.20mm以上の大きさで,48時間以上経過しても胃内にある場合は摘出を推奨する.

C鋭利な異物

 遠位腸管への移動,腸穿孔を避けるために,内視鏡で到達可能であれば(胃~近位十二指腸),無症状でも緊急(<2時間)に摘出する.内視鏡で到達不可能な場合は,消化管穿孔や穿通を注意深く観察しつつ,外科に紹介することを推奨する.

D複数の磁石,金属+磁石

 磁力が強い場合,腸壁に虚血,穿孔,瘻孔,軸捻転を引き起こす可能性がある.複数の磁石がくっつい

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