今日の診療
治療指針
小児

神経芽腫
neuroblastoma(NB)
家原知子
(京都府立医科大学教授・小児科学)

頻度 あまりみない(小児人口の1万人に1人の発症で,わが国では年間200人前後の新規発生がある)

ニュートピックス

・2021年ジヌツキシマブ(抗GD2抗体)が大量化学療法後の高リスク神経芽腫に対して発売され,治療の選択肢が増えた.

治療のポイント

・初診時の正確なリスク分類とリスクに応じた治療選択を行う.

・治療終了後の長期的な合併症を考慮する必要がある.

◆病態と診断

A病態

・起源は胎生期の神経堤細胞であり,体幹の交感神経節や副腎髄質が原発巣となる.腹部原発が60%以上と最も頻度が高い.一般的には神経芽腫,神経節芽腫を総称して神経芽腫といわれている.

・自然退縮を示す悪性度の低いものから,遠隔転移をきたす悪性度の高いものまで,多彩な腫瘍動態を示す.

・おおむね5歳以下に発症する胎児性腫瘍である.

B診断

・症状は転移部位によって,発熱・疼痛・貧血など多様である.

・確定診断は病理学的診断である.

・骨髄転移がある例では,骨髄穿刺や生検検体による鏡検診断が必要である.

・腫瘍マーカーとして尿中バニリルマンデル酸(VMA)ホモバニリン酸(HVA)や,血中神経特異エノラーゼ(NSE)が有用である.

・病期診断のため超音波,CT,MRI,MIBGシンチグラフィが有用である.

◆治療方針

 国際神経芽腫リスクグループ(INRG)分類に従い,リスクに応じた治療を行う.

A極低リスク腫瘍

 12か月未満の症例では,自然退縮を期待して無治療経過観察が選択される場合がある.手術摘出のみで治療終了となる.生存率はほぼ100%である.

B低リスク腫瘍

 手術で腫瘍摘出されたのちは治療終了となるが,一期的な手術摘出が不可能な場合には,低用量のビンクリスチン,シクロホスファミドからなる治療を行う.生存率は95%以上である.

C中間リスク腫瘍

 化学療法は,ビンクリスチン,シクロホスファミド,ドキソルビシン,シスプラチンなどのなかから2~4

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