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治療指針
小児

運動発達の遅れ
motor developmental delay
丸山幸一
(愛知県医療療育総合センター中央病院・小児神経科部長)

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◆病態と診断

A病態

・乳児期から幼児期早期に明らかとなる運動発達の遅れの原因は,脳性麻痺,知的障害,染色体異常,先天異常症候群,代謝異常症,運動ニューロン疾患,末梢神経疾患,神経筋接合部疾患,筋疾患などさまざまであり,正常発達のバリエーションとも鑑別を要する.

B診断

・診察のポイントは,①遅れの程度と時間経過(進行性の有無),②知的障害の有無(脳原性を示唆),③筋力低下の有無(神経筋疾患を示唆),④姿勢や運動の異常の有無(筋緊張異常,不随意運動,失調など),⑤合併症の有無(奇形徴候,成長障害,呼吸不全,心不全,摂食嚥下障害,肝脾腫,皮膚病変,けいれんなど)である.

・問診では家族歴(同症状の兄弟や血縁者の有無),妊娠中・出生時・新生児期のリスク因子(母子手帳で確認),既往歴,哺乳や摂食,意思疎通,自発運動,遊びの様子などを聞き取る.身体計測は身長・体重および頭囲を母子手帳のグラフにプロットする.正常運動発達(おおよそ生後4か月で頸定,8か月で坐位,1歳で伝い歩き,1歳6か月で歩行,2歳で小走り,3歳で段差の飛び降り)と比較して,発症時期と時間経過を大まかに判断する.遠城寺式乳幼児分析的発達検査法などの発達表を用いると,粗大運動のみならず微細運動,社会性,知的発達のプロフィールを短時間で評価できる.

・乳児ではいきなり体に触れず,まず背臥位で筋緊張(体が固く体幹のねじれや反り返り・四肢の伸展やつっぱりがあれば亢進,体が柔らかく動きが乏しければ低下),筋力(重力に抗して四肢を挙上し空中に保持できなければ低下),上肢の運動(両手合わせ,手を伸ばす,物の把持)を観察する.同時に行動(視線を合わせる,よびかけへの反応,あやし笑い,発声や発語,指差し,模倣,人見知りなど)から知的発達を評価する.次いで両手を持ってゆっくり引き起こし,首のすわりや上肢の筋力を確認しながら座らせ,体幹

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