今日の診療
治療指針
小児

言葉の遅れ
delayed speech and language development
後藤知英
(神奈川県立こども医療センター・神経内科部長)

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治療のポイント

・大まかに,1歳前後で有意語が出始め,1歳半前後までに言葉の数が増え,2歳で二語文,3歳で三語文が出ていれば正常.

・「言葉の遅れ」にはさまざまな原因があり,それぞれに対応が異なる.

◆病態と診断

A病態

難聴

1)感音性:内耳から中枢側の聴覚伝導路に原因があるもの.先天性の遺伝性難聴,先天性サイトメガロウイルス感染症など.

2)伝音性:中耳から外耳に音の伝達障害があるもの.中耳炎などの炎症性疾患,外耳道閉鎖などの先天奇形など.

・知的発達症:知的発達の遅れのため,言語理解や発語が遅れるもの.

自閉スペクトラム症:社会性・コミュニケーションの障害のため,言語表出や理解が遅れるもの.

・発達性言語遅滞:運動発達の遅れや自閉スペクトラム症などの問題がなく,言語の発達のみが遅れるもの.

1)表出性言語発達障害:言語の表出のみが遅れ,そのほかの発達の遅れや発達障害が認められないもの.

2)受容性言語発達障害:言語理解が遅れるもの.通常は表出性言語発達障害を伴う.

・構音障害・構語障害:舌や口唇・口腔・喉頭の構造的な問題(粘膜下口蓋裂や鼻咽腔閉鎖不全など)や運動麻痺,難聴による発音習得の制限などのため,言葉をはっきりと発音することが難しいもの.

B診断

・言語発達の目安はを参照.生後9~15か月ごろに90%の子どもで有意語が出現する.

・家族からの情報収集と本人の症状の診察を詳細に行い,言語発達の遅れがどのようなものであるかを判断し,上記の病態を推測する.

1)音や呼名に対する反応があるか.

2)外耳道の形態的な異常はないか.

3)言語以外の発達の遅れ(粗大運動,微細運動,言語の理解)はあるか.

4)視線が合いづらい,こだわりが強い,などの特徴があるか.

5)言語発音が明瞭であるか.

・病態に応じ,詳細な発達検査・心理検査,頭部MRI検査,聴覚検査などを行う.

◆治療方針

 疑われる病態に応じ,

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