今日の診療
治療指針
小児

小児の疼痛障害
pain disorders in children
岡田あゆみ
(岡山大学大学院准教授・小児医科学)

頻度 あまりみない

GL慢性疼痛診療ガイドライン2021

治療のポイント

・非薬物療法が治療の基本である.痛みに過度に注目せず,生活リズムを整える,適度な運動をすることなどを指導する.

・基礎疾患があればこれに対する薬物療法を併用するが,痛みの完全な消失を目指さない.

・痛みの持続には,痛みだけでなく「痛み対処行動」の影響が大きい.

・痛みによる2次的疾病利得に配慮する.

◆病態と診断

A病態

・疼痛性障害は,身体症状症のなかで疼痛が主症状のものを指す.身体症状症の身体症状はさまざまだが,症状を引き起こす基礎疾患の有無を問わず,日常生活に支障をきたしているとともに,自分の症状を過度に心配して健康に対して不安を抱え,その懸念に過度の時間と労力を費やすことが特徴である.

・小児は反復性の腹痛や頭痛を訴えることが多い.詐病ではなく本人は疼痛を自覚しているが,2次的疾病利得(痛みの出現によって葛藤を回避する.例えば,腹痛があるから宿題を免除されるなど)のために訴えが遷延する場合がある.

B診断

・基礎疾患から予想される以上に疼痛を訴える場合に診断を行う.よって詳しい問診と行動観察が重要である.状況によって疼痛が増減する場合と,慢性に疼痛を訴える場合とがあり,前者は環境調整により改善することが多いが,後者は年余の経過を示すことがある.

◆治療方針

 痛みは「実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する,あるいはそれに似た,感覚かつ情動の不快な体験」と定義される.痛みだけでなくこれに伴う主観的な体験への理解が必要で,これが「痛み対処行動」を決定している.痛みへの過度の注目や心配,痛みを回避するための寡動などの不適切な対処行動が,症状を悪化・遷延させることに留意する.

A疾病教育と生活指導

 基礎疾患に対する標準的な治療とともに,「痛み対処行動」の改善が痛みの軽減には重要なことを説明する.具体的には,痛み⇒

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