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小児

小児の注意欠如・多動症(ADHD)
attention deficit/hyperactivity disorder(ADHD)in childhood
永光信一郎
(福岡大学主任教授・小児科)

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GL注意欠如・多動症─ADHD─の診断・治療ガイドライン(第4版)(2016)

治療のポイント

・環境調整と心理社会的治療で症状の改善が認められない場合に,薬物療法を併用する.

・4つの薬剤(メチルフェニデート,アトモキセチン,グアンファシン,リスデキサンフェタミン)を標的症状に合わせて使い分ける.

・自閉スペクトラム症の併存や,不適切な養育環境による症状の修飾がないか留意する.

◆病態と診断

A病態

・ADHDは神経発達症の1つで,前頭前野の機能不全による実行機能障害に加え,報酬系の障害,情動コントロールの障害が考えられている.

・治療薬は,ドパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のシグナルを改善させると考えられている.

・男性に多く,家族内で集積する傾向があり,ほかの神経発達症を合併することがある.

B診断

・12歳以前から学校,家庭,職場など複数の場面で多動衝動性不注意を認める.診断には幼少期の発達歴(周産期の異常,乳幼児期の言語発達や睡眠,人見知りや分離不安の有無など)や,就園・就学先での様子(授業中の離席,集中力の欠如,衝動性によるクラスメートとのトラブル)など,情報を収集することが不可欠である.女性の場合,多動や衝動性は目立たず,忘れ物が多い,片付けられないなどの不注意症状が前面に立つ場合がある.

・DSM-5に基づいて確定診断を行う.DSM-5のA項目(不注意症状または多動性・衝動性症状)から,17歳未満は6項目以上,17歳以上は少なくとも5項目以上を満たすことが必要となった.評価尺度には,ADHD Rating Scale(ADHD-RS)がよく使われる.

・反抗挑発症や素行症などの「行動障害群」,不安症,気分障害などの「情緒的障害群」,夜尿症などの排泄障害やチック症,限局性学習症,発達性協調運動症,睡眠覚醒障害などが認められることが多い.

◆治療方針

A心理社会的

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