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治療指針
小児

児童虐待・子どものマルトリートメント
childhood maltreatment
藤田純一
(横浜市立大学講師・児童精神科)

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ニュートピックス

・2020(令和2)年度の統計では,虐待の通告件数は過去最多となった.児童虐待・子どものマルトリートメントの問題は,社会全体で取り組む課題である.

治療のポイント

・早期発見・早期支援が重要である.

・院内・院外問わず多職種で連携し,支援にあたる.

A背景

 子どもの逆境体験は子どもの生命や健康を脅かす.医療者が注目すべきは,虐待による身体的外傷や生命危機のみではない.同時に生じる心的外傷は子どもの生涯,さらには世代を超えた影響を与える可能性がある.例えば,生物学的には子どもの脳の発達を妨げ,心的には自尊心の低下を生じる.のちには,物質使用障害や自殺などのリスクの高い行動にもつながるとされる.

 厚生労働省の発表によれば2020(令和2)年度の虐待通告件数は過去最多の20万5,029件を記録しており,相談の内容別件数は,多い順に,心理的虐待12万1,325件(全体の59.2%),身体的虐待5万33件(24.4%),ネグレクト3万1,420件(15.3%),性的虐待2,251件(1.1%)となっている.

 課題として,居所不明児童の積極的な把握や精神疾患を抱える母親などへの支援など,虐待の発生予防・早期発見体制を強化すること,要保護児童対策地域協議会などによる情報の共有と活用など,関係機関の連携と役割分担による切れ目ない支援,多角的視点を取り入れたリスク評価能力の向上と相談体制の強化などが挙げられているが,実際は増え続ける虐待案件に児童相談所をはじめとする地域福祉機関は応需しきれていないのが実情である.

B定義

 児童虐待の防止等に関する法律第2条では「保護者がその監護する児童(18歳未満)について,身体的,性的,心理的虐待およびネグレクトにあたる行為を行っていること」が児童虐待と定義されている.近年はこの児童虐待とほぼ同義であるが,子どもの心と身体の成長・発達を

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