今日の診療
治療指針
小児

チック症/トゥレット症(チック障害/トゥレット障害)
tic disorder/Tourette's disorder
佐々木征行
(国立精神・神経医療研究センター・脳神経小児科診療部長(東京))

頻度 よくみる(1~5%の小児にチックがあるといわれている)

治療のポイント

・家族と周囲の人に本症の特性を理解してもらうことが大切である.

・多くは1年以内に症状が自然消退する.

・本人に苦痛があって日常生活に支障をきたす場合は薬物療法を考慮する.

・併存疾患の有無についても評価する.

◆病態と診断

・チックとは,突発的,急速,反復性,非律動性の運動あるいは発声で,運動チックと音声チックがある.1年以上続く慢性チックと,一時的な一過性チックがある.慢性チックのうち運動チックと音声チックの両者を呈する場合(同時でなくても)を,トゥレット症という.

・大脳皮質-大脳基底核ループ(皮質-線条体-視床-皮質回路)の異常やドパミン受容体過活動が病態に関与している可能性が提唱されているが,正確には解明されていない.

・注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)に併存することがある.

・強迫症(OCD),不安症,睡眠障害,むずむず脚症候群などを合併することがある.

◆治療方針

Aチック症状への対応

1.家族ガイダンス

 家族と周囲の人が,本症の特性を理解することが最も重要である.チック症には生物学的基盤があり,わざとしているわけではないし,しつけや育て方が悪いわけでもない.

 チック症状が出ていると,本人は調子がいいこともある.その症状で誰が困るのか,誰のために治療するのか,確認する.治療にあたってチック症状の完全消失を短期的な目標にしない.自然治癒が多いことから,症状を受け入れながら,必要に応じて非薬物療法と薬物療法を併用しながら経過をみることを家族・本人に説明する.

 家族がイライラしてつらい場合は,家族がカウンセリングを受けることをお勧めする.

2.環境調整

 家族や周囲の人にチックに対する理解を深めてもらう.注意したり,咎めたり,叱ったりすることは,逆効果につながりやすいので行わない.そのうえで,

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