今日の診療
治療指針

網膜剥離
retinal detachment
西田明弘
(倉敷中央病院・眼科主任部長(岡山))

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治療のポイント

・病態によって治療方針が異なるため,下記のどの病態に当てはまるかを正確に診断する.

・手術の場合,強膜バックリングか硝子体手術か適切に選択する.

◆病態と診断

A病態

・網膜神経細胞および神経線維からなる神経網膜が,網膜色素上皮細胞層から剥離するのが網膜剥離である.網膜剥離を起こした部位には視野欠損が生じる.原因によって下記の3つに分類される.

1.裂孔原性網膜剥離

・後部硝子体剥離による網膜への牽引,外傷,網膜の萎縮といった原因により形成された網膜裂孔や,円孔から液化した硝子体が網膜下に流入することにより生じる.

・好発年齢は若年者と中高年の二峰性とされていたが,近年は50~60代をピークとする一峰性という報告もある.

2.牽引性網膜剥離

・網膜表面に形成された増殖膜が神経網膜を牽引することにより生じる.糖尿病網膜症,未熟児網膜症,網膜静脈閉塞症,外傷などに続発する.

・裂孔原性網膜剥離を長期間放置すると増殖膜が形成され,増殖性硝子体網膜症という難治性の病態に進行することがある.

3.滲出性網膜剥離

・中心性漿液性網脈絡膜症,加齢黄斑変性,ぶどう膜炎,脈絡膜腫瘍などに続発する.全身疾患やステロイド投与に続発することもある.血液網膜関門の破綻が原因である.

B診断

・裂孔原性網膜剥離では,前駆症状として飛蚊症光視症を自覚することがある.網膜剥離が進行すれば視野欠損や視力低下を自覚するが,初期には自覚症状がないことも多い.

・倒像鏡や検査用眼底レンズを使用した眼底検査で診断するが,近年は光干渉断層計(OCT)検査が非常に有用である.白内障や硝子体出血で眼底検査が不可能な場合は,超音波Bモード検査を行う.

◆治療方針

A裂孔原性網膜剥離

 観血的手術が原則であるが,網膜剥離の範囲がきわめて狭い場合には網膜光凝固が行われることもある.網膜剥離が黄斑部に達すると視力が著しく低下するため,

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