今日の診療
治療指針

眼底出血
hemorrhages in ocular fundus
高村佳弘
(福井大学准教授・眼科学)

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◆病態と診断

A病態

・眼底出血は,硝子体出血と網膜,脈絡膜を含む後眼部における出血の総称である.出血は,病的に構造変化した血管や新生血管の破綻から生じる.

・眼底出血の原因となる網膜疾患は複数あり,出血の好発部位も異なる.

・硝子体出血の原因疾患として,糖尿病網膜症,網膜裂孔,網膜静脈閉塞症が,全体のおよそ7割を占める.

・網膜出血は,出血部位により網膜前,網膜,網膜下出血に分けられる.

B診断

・片眼性の急激な視力低下を訴えることが少なくない.硝子体出血では,「黒いものが見える」といった症状を自覚することがある.

・原因疾患の同定には,眼底検査光干渉断層計(OCT)蛍光眼底造影検査などが用いられる.特に新生血管を見落とさないように注意する.

・虚血性網膜疾患においては,蛍光眼底造影検査,OCTアンギオグラフィにより,無灌流領域(虚血領域)を描出する.

・眼底出血は糖尿病や高血圧が関連する網膜疾患(糖尿病網膜症,網膜静脈閉塞症など)で生じることが多く,全身疾患について他科から眼科への情報提供が望ましい.

◆治療方針

 原因疾患ごとに異なる.出血が軽度であれば自然軽快することもあるが,改善しない場合は,硝子体手術が必要になる.

A糖尿病網膜症

 増殖糖尿病網膜症に進行して発生した新生血管が破綻することで,硝子体出血・網膜出血を生じる.硝子体出血が消退しない場合や増殖膜の増生を伴う場合,硝子体手術が推奨されるが,出血が再度起こることもある.広範囲の虚血領域に対しては,汎網膜光凝固を行う.黄斑浮腫を伴う場合には抗血管内皮増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)薬の硝子体注射を行うこともある.詳細は「糖尿病網膜症」の項()を参照.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)ラニビズマブ(ルセンティス)注 1回0.5mg 硝子体注射

2)アフリ

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