今日の診療
治療指針

飛蚊症
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森 圭介
(国際医療福祉大学教授・眼科学)

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治療のポイント

・生理的飛蚊症は,基本的には経過観察のみでよい.

・病的飛蚊症の場合は,原疾患の治療が必要である.緊急性が高いことが多い.

◆病態と診断

A病態

・飛蚊症とは,本来透明である硝子体に何らかの原因で混濁が生じ,その影が網膜に投影されて生じるものをいう.

・混濁は可動性のある硝子体の中を浮遊しているので,視線をずらすとふわふわ動くという特徴がある.飛蚊症は,青空などコントラストがつきやすい背景の中に見えることが多い.

・混濁の成因により,生理的飛蚊症と病的飛蚊症に分けられる.

1.生理的飛蚊症

・硝子体は99%水でできており,残りの大部分はコラーゲンやヒアルロン酸などの細胞外基質よりなる.元来,硝子体は均質で透明だが,加齢に伴い細胞外基質が減少し,水成分が増加(硝子体液化)すると,ゲルと水が分離(syneresis)し,線維成分が凝集し,網膜に影を落とす.

・Syneresisは学童期などの若年時から部分的には生じているため,時に若年者(特に近視眼)でも飛蚊症を自覚することはある.中高年になるとさらに硝子体液化が進行し,硝子体が網膜から完全に剥離する(後部硝子体剥離).

・後部硝子体剥離は全生涯をかけてゆっくりと進行するが,最後に完全に剥離するときに,飛蚊症の症状が突然悪化することが多い.これらの変化は加齢に伴う生理的な変化であるが,時に以下のような病的な飛蚊症に進展することがある.

2.病的(症候性)飛蚊症

・病的飛蚊症に伴う疾患の代表に網膜裂孔,網膜剥離がある.

・網膜裂孔は,後部硝子体剥離が形成されていく過程で,網膜と硝子体の癒着の強い部分が,硝子体に牽引されて形成される.網膜裂孔が生じると,出血中の血球成分や網膜色素上皮細胞などが硝子体内に飛散するため,飛蚊症の発症もしくは悪化をみることが多い.

・糖尿病網膜症,網膜静脈閉塞症など,網膜新生血管の生じる病態でも硝子体出血

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