今日の診療
治療指針

黄斑上膜,黄斑円孔
epimacular membrane and macular hole
森實祐基
(岡山大学大学院教授・眼科学)

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ニュートピックス

・これまで明確でなかった黄斑上膜,黄斑円孔とその類縁疾患(分層黄斑円孔,偽黄斑円孔など)の定義について,OCTの所見に基づく新しい定義が発表された.

治療のポイント

・両疾患ともに手術が唯一の治療である.

・黄斑上膜の手術適応は,自覚症状(視力低下,変視)の程度によって判断する.

・黄斑円孔を放置した場合,視機能の回復が見込めなくなるため,積極的に手術を行う.

・両疾患ともに手術によって自覚症状は軽減するが,完全に消失することは少ない.

Ⅰ.黄斑上膜

◆病態と診断

A病態

・黄斑を中心とした後極部網膜に,薄い膜が形成される疾患である.後極部網膜に残存した後部硝子体皮質上に,グリア細胞,筋線維芽細胞が増殖・分化して形成されると考えられている.40歳以上の約10%に発症すると報告されており,加齢がリスク因子である.

・特発性が最も多いが,糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症などの網膜循環障害,眼内炎症,網膜剥離,外傷などに続発することもある.

B診断

・初期には無症状であるが,進行すると視力低下,変視不等像視(大視症)などの視機能障害をきたす.

・自覚症状と眼底所見から診断を行うが,光干渉断層計(OCT)がきわめて有用である.

・視力以外の視機能評価として,変視はAmsler ChartsやM-CHARTSを用い,不等像視はNew Aniseikonia Testを用いて評価する.

◆治療方針

 有効な薬物治療はなく,硝子体手術による黄斑上膜の除去が唯一の治療法である.手術適応について明確な基準はなく,視機能障害の程度に応じて手術適応を判断する.視力が良好で変視などの自覚症状がなければ経過を観察する.近年では,OCTの進歩によって,視力が低下する前に黄斑上膜が発見されることが珍しくない.そのため,手術適応を考えるうえで変視の重要性が増している.一般にM-CHARTS値が0.5以上で生活

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