今日の診療
治療指針
小児

小児眼底疾患
pediatric retinal diseases
近藤寛之
(産業医科大学教授・眼科学)

Ⅰ.未熟児網膜症

頻度 あまりみない

◆病態と診断

A病態

・低出生体重児にみられる網膜症である.

・網膜血管は,胎齢16週より視神経乳頭から周辺部に向かって形成が始まり,36週で完了する.周辺部の無血管の網膜では血管内皮増殖因子(VEGF)が発現し,網膜血管の伸展を誘導する.

・低出生体重児では,出生後に網膜の虚血状態の亢進・VEGFの過剰産生により,網膜新生血管が生じる.新生血管・増殖組織の形成により,硝子体が収縮すると網膜剥離を起こして失明に至る.

B診断

・修正週数(在胎週数に出生後週数を加えたもの)29週を目安に眼底検査を行い,網膜症の発症の有無,網膜血管の発育度(発育の悪い順にzone Ⅰ~Ⅲに分類),進行度(stage 1~5に分類),活動性(plus disease:後極血管の拡張・蛇行の有無により決定),タイプ(劇症型の有無)を評価する.

◆治療方針

 国際基準に基づいて①plus diseaseを伴うzone Ⅰ,②plus diseaseを伴わないzone Ⅰ stage 3,③plus diseaseを伴うzone Ⅱ stage 3,④劇症型,のいずれかなら治療適応とし,網膜凝固(レーザー治療)か抗VEGF抗体の硝子体内注射を行い網膜剥離への進行を防ぐ.網膜剥離を生じた場合には硝子体手術や強膜輪状締結術を選択する.

Ⅱ.家族性滲出性硝子体網膜症

頻度 あまりみない

◆病態と診断

・未熟児網膜症に類似した眼底像を示す遺伝性疾患である.症例の約半数が家族性で常染色体優性が多く,常染色体劣性やX染色体劣性もみられる.

・眼底像は周辺部の網膜無血管や血管形成異常が特徴的であり,乳児期に硝子体出血網膜剥離(白色瞳孔や鎌状網膜襞,滲出性網膜剥離),小児期に裂孔原性網膜剥離を起こす.症例によって重症度が異なり,無症候性で眼底所見が軽度な異常にとどまるものも多い.

・診断には蛍光眼底造影撮影

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