今日の診療
治療指針

眼窩疾患
orbital diseases
渡辺彰英
(京都府立医科大学学内講師・眼科学)

治療のポイント

・眼球突出,眼球運動制限による複視,視力障害などの症状から眼窩疾患を疑うことが重要である.

・頻度の高い眼窩疾患としては,眼窩腫瘍,眼窩炎症,眼窩骨折,甲状腺眼症がある.ほかに眼窩内異物,眼窩蜂窩織炎などが挙げられる.

・眼窩骨折では,筋絞扼閉鎖型骨折を見逃さず緊急手術が可能な施設へ直ちに紹介する必要がある.

・甲状腺眼症では,外眼筋腫大による視神経障害をきたす可能性がある.

Ⅰ.眼窩腫瘍

◆病態と診断

A病態

・眼窩に発生する良性腫瘍には,多形腺腫,血管腫,神経鞘腫,髄膜腫,皮様嚢腫,IgG4関連眼疾患,反応性リンパ過形成や涙腺炎を含む炎症性偽腫瘍(特発性眼窩炎症)などがある.

・悪性腫瘍では,リンパ腫〔粘膜関連リンパ組織(MALT:mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫が多い〕,腺様嚢胞癌,横紋筋肉腫,転移性腫瘍などがある.

・腫瘍が小さなうちは無症状であるが,徐々に増大すると眼球突出眼球運動障害眼球偏位をきたし,眼窩先端部や視神経腫瘍では視力低下および視野障害を引き起こす.

・涙腺部腫瘤を呈する眼窩炎症のうち,涙腺炎は特発性と全身疾患に関連する続発性に分類される.

・外眼筋腫大を呈する外眼筋炎は,特発性眼窩炎症としての外眼筋炎と甲状腺眼症に伴う外眼筋炎に分類される.外眼筋への転移性腫瘍も散見される.

B診断

・眼窩腫瘍を疑えば視力,視野,HESSチャートなどの眼科的検査を行い,CTおよびMRIにて画像診断を行う.

・画像上,境界明瞭な片側性の腫瘍であれば全摘出を計画し,境界不明瞭や両側性の腫瘍であれば生検を行う.

・確定診断は生検もしくは摘出後の病理組織学的検索による.

◆治療方針

 画像上,全摘出可能と判断すれば眼窩腫瘍摘出術を施行する.摘出術,生検によってIgG4関連眼疾患や悪性腫瘍と診断されれば,全身検索を行う.IgG4関連疾患,特発性眼窩

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