今日の診療
治療指針
救急

眼科救急疾患
emergency in ophthalmology
恩田秀寿
(昭和大学主任教授・眼科学)

頻度 あまりみない

Ⅰ.網膜動脈閉塞症

治療のポイント

・発症直後に電話などで相談された場合には,すみやかに眼球マッサージを行うように指示し,医師が診察するまで持続的に行わせる.

・閉塞解除による血流再開が治療の目的である.

・発症から約90分を経過すると網膜の不可逆性変化が生じるため,すみやかに治療を開始する.発症から1日以内の症例であれば,積極的に治療を行うべきである.治療開始を分単位で急ぐ必要がある.

◆病態と診断

A病態

・網膜内層2/3は網膜中心動脈血流により栄養され,外層1/3は脈絡膜毛細管板血流により栄養されている.

・網膜中心動脈が血栓で閉塞されると,網膜内層の虚血が生じ,光覚を失うほどの急激な視力低下をきたす.分枝閉塞の場合には,部分的な視野狭窄をきたす.

・眼動脈の分枝である毛様動脈が存在すれば,視神経乳頭と黄斑部間の血流が保たれるため,視力低下が生じづらい.

B診断

・眼底検査:網膜中心動脈閉塞の急性期は,cherry red spot,網膜浮腫による網膜の白濁,視神経乳頭蒼白がみられることが多い.分枝閉塞では閉塞領域の網膜が白濁するのみである.

フルオレセイン蛍光造影:腕網膜循環時間(通常10秒)の高度な遅延を認める.そのため後期像においても,脈絡膜血流による蛍光背景越しに,血流のない網膜動脈が際立って観察される.

◆治療方針

A眼球マッサージ

 急性期に有効であり,迅速かつ簡便に行える手技である.閉瞼したまま眼瞼の上に手のひらを乗せて,10秒間圧力をかけ,すみやかに圧迫を解除する.これを5分以上なるべく長時間繰り返す.細隙灯顕微鏡を使用し接眼レンズ越しに眼球を直接圧迫しながら,視神経乳頭上の動脈血流を観察する方法もある.

B薬物療法

1.血栓溶解療法(静脈内投与)

 発症から6時間以内に治療可能であり,発症時間,頭蓋内出血,脳梗塞の発症と既往がないこと,全身に出血傾向がないことを確認

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