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治療のポイント
・両眼複視か単眼複視かを鑑別する.
・単眼複視であれば屈折矯正を,両眼複視であれば眼位矯正を行う.
Ⅰ.単眼複視
◆病態と診断
A病態
・片眼でものを見たときに,2つ以上に重なって感じられる状態である.黄斑への結像が集中しないことで起こる.主に屈折異常や黄斑の形態異常が原因である.心因性視力障害による場合もある.
B診断
・屈折検査,角膜形状解析を行い,乱視の程度を測定する.細隙灯顕微鏡,眼底検査,光干渉断層計で白内障の程度や黄斑の形態を解析する.
◆治療方針
屈折異常があれば,眼鏡処方による屈折矯正を行う.不正乱視の場合にはハードコンタクトレンズを処方する.白内障による散乱が強い場合には白内障手術を行う.黄斑前膜や黄斑浮腫に対しては,手術や血管内皮増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)阻害薬の硝子体注射を行う.
Ⅱ.両眼複視
◆病態と診断
A病態
・右眼と左眼の視線方向が異なるため,脳内で左右の像を重ね合わせることができずに,像の重複を自覚する状態である.両眼開放時にのみ発生する.斜視,眼球運動障害による自覚症状である.
B診断
・片眼を遮閉したときには複視の自覚が消失することで診断できる.眼球運動障害の程度は,Hess赤緑試験で評価が可能である.
◆治療方針
原因別に治療が異なるが,斜視の治療方針に準じる.
A代償不全型斜視の場合
過去に融像できていたが加齢や疲労で融像ができなくなった状態である.斜視手術やプリズム眼鏡で治療する.
B脳神経障害
障害の原因が不明なことも多く,微小血管障害による虚血が示唆される.明らかな原因が発見できない場合には,自然軽快を半年間待ち,障害が固定した段階で斜視手術を行う.プリズム眼鏡やボツリヌス毒素注射により,急性期の症状緩和を行うこともある.治療を行っても完全治癒することはない.