今日の診療
治療指針

眼球突出
exophthalmos
柏井 聡
(愛知淑徳大学健康医療科学部教授・視覚科学)

頻度 割合みる

ニュートピックス

・眼球突出改善(2mm以上)作用をもつ初の甲状腺眼症治療薬teprotumumab(インスリン様成長因子Ⅰ受容体拮抗薬)の本邦第Ⅲ相臨床試験(jRCT2031210453)が2022年2月始まった.

治療のポイント

・本項では,可及的すみやかな治療が必要な急性眼窩炎症疾患を中心に解説する.腫瘍は視力維持・改善が期待される保存的治療が優先される疾患のみ取り上げた.

・急性眼窩炎症疾患は,まず眼窩蜂巣炎を除外し,安易な副腎皮質ステロイド薬の使用は控える.

・原則,炎症類縁疾患は生検を行い,組織診断に基づき治療する.

・甲状腺眼症は,内科,眼科,放射線科が連携し入院治療できる施設を核に,かかりつけ医との病診連携によって治療する.

◆病態と診断

A病態

・発症様式:単眼急性(数時間~1週)発症は眼窩内出血や眼窩蜂巣織炎,亜急性(1~4週)は眼窩炎症性疾患,徐々に突出してきた慢性(4週以上)例は腫瘍性疾患を考える(表1).

・突出方向:眼軸にそった前方突出は球後や眼窩先端の塊状病変や外眼筋肥大であり,前方だけでなく視線が本来の眼位(第1眼位)から偏位した非軸性突出は,偏位方向によって病態が異なる(表2).

・眼窩腫瘍は年齢で病理が異なる(表3).

B診断

眼球突出は,ヘルテル眼球突出計で眼窩外側骨縁から19mm以上,左右差3mm以上を異常と考える.CTやMRIの画像上の眼球突出度はヘルテルに比べ,仰臥位で角膜内面から計測するため,0.5mm程度低くなる傾向がある.

・急性眼窩炎症性疾患では,眼瞼下垂は眼窩蜂巣炎を疑い,視力障害に相対的瞳孔求心路障害陽性例は眼窩先端から海綿静脈洞の造影MRIを追加し,感染が除外できれば炎症類縁疾患を鑑別する.眼瞼後退症は眼瞼手術歴がなければ,血液検査にかかわらず,甲状腺眼症と診断できる.

◆治療方針

A感染性眼窩疾患

 眼球運動障害がなければ眼窩

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?