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外耳道は外耳孔から鼓膜までの管状通路で軟骨部(外側1/2)と骨部(内側1/2)からなる.軟骨部には毳毛,皮脂腺,耳垢腺があるが,骨部にはない.耳垢は皮脂腺と耳垢腺からの分泌物と落屑物と塵芥などが混合しているが,酸性による殺菌作用,リゾチームやIgAなどを含むことによる抗菌作用,脂質による皮膚表面の保護作用がある.
Ⅰ.急性限局性外耳炎(耳せつ)
◆病態と診断
・過度な耳掃除や入浴・水泳などにより軟骨部外耳道に存在する皮脂腺と耳垢腺に炎症が生じた場合に生じる.起炎菌には黄色ブドウ球菌が多い.
・激しい耳痛が生じることがある.頭頂部や歯に放散痛が生じることがあり,顎関節運動で増悪する.限局した皮膚の発赤,腫脹が生じる.
◆治療方針
局所の清掃と抗菌薬の局所投与を行う.膿瘍を形成している場合には切開排膿を行い,抗菌薬混合軟膏(ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム・フラジオマイシン)を塗布する.外耳道外に炎症が波及したときには抗菌薬の全身投与を行う.
Px処方例 外耳道外に炎症が波及した場合,アモキシシリン(AMPC)などのペニシリン系あるいはセファレキシン(CEX)などの第1世代経口βラクタム系抗菌薬を投与する.
アモキシシリン(サワシリン薬)カプセル 1回250mg 1日3~4回 投与
反応が悪い場合は細菌培養結果により,感受性をもった薬剤へ変更する.
Ⅱ.急性びまん性外耳道炎
◆病態と診断
・骨部外耳道に炎症が生じるものを急性びまん性外耳道炎と呼ぶ.
・過度な耳掃除による外耳道の防御機構の破綻,水泳などの湿潤環境をきっかけに発症する.起炎菌は黄色ブドウ球菌や緑膿菌などである.
・耳痛が出現し,外耳道皮膚が広範囲に発赤し,分泌物・痂皮が付着する.
◆治療方針
外耳道の清掃および抗菌薬の点耳を行う.
Px処方例
オフロキサシン(タリビッド薬)耳科用液 1回6~10滴 1日2回 点耳 点耳後
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