治療のポイント
・鼓膜炎は大きく急性鼓膜炎と慢性鼓膜炎の2つに分類され,治療方針が異なる.
・鼓膜外耳道を顕微鏡や内視鏡で詳細に観察することが重要である.
・急性鼓膜炎は高度の耳痛を訴え,鼓膜の水疱形成を特徴とする.感音難聴が出現する場合がある.
・慢性鼓膜炎は鼓膜の肉芽形成やびらんを特徴とし,持続する耳漏,耳のかゆみ,耳閉感,難聴を訴える.
・両者とも局所処置が重要である.
◆病態と診断
A急性鼓膜炎
・急性鼓膜炎は急性中耳炎の一亜型と考えられており,水疱性鼓膜炎(bullous myringitis)として知られている.鼓膜の表面に水疱の形成がみられ,発赤のある鼓膜表面上皮下に黄橙色の内容液が透見される.
・乳幼児から成人に発症するが学童期に多いとされる.
・ほとんどが一側性である.
・伝音難聴以外に中等度の感音難聴,混合性難聴がみられる.感音難聴は60%程度が回復するとされているが聴力の経過観察が必要である.
・本疾患の正確な病因は不明である.以前はインフルエンザウイルスとの関連が示唆されていたが,現在では水疱内容物からインフルエンザウイルスが検出されず,肺炎球菌やインフルエンザ桿菌など急性中耳炎の起炎菌が同定されたことにより,否定的である.
・鼻かみなどの中耳腔陽圧変化に伴う圧外傷による要因も考えられている.
・ラムゼイ・ハント症候群と鑑別が困難な場合があり,顔面神経麻痺の有無に関して表情筋の動きを確認しておく.
B慢性鼓膜炎
・慢性鼓膜炎は肉芽性鼓膜炎,病変が外耳道まで及ぶ場合には肉芽性外耳道炎と呼ばれる.
・外耳道湿疹,慢性中耳炎と鑑別が困難な場合がある.
・鼓膜に肉芽,びらんを認める.
・耳漏は治療に抵抗性であり,持続する耳漏を訴えることが多い.
・チューブ留置や鼓膜穿孔の既往がある外耳道湿疹は鼓膜炎の存在を疑うべきである.
◆治療方針
急性鼓膜炎では,水疱に切開を加え内容物を吸引除去する.内容物は細