頻度 あまりみない
治療のポイント
・鼓膜穿孔のみであれば自然閉鎖することが多い.
・内耳障害(めまい,感音難聴)を合併した場合,外リンパ瘻を疑う.
・穿孔が閉鎖しても伝音難聴がある場合,耳小骨離断を疑う.
◆病態と診断
A病態
・外傷性鼓膜穿孔は直達外傷によるものと介達性外傷によるものに分けられる.
・直達外傷には耳かき,綿棒の使用によるもの,介達性外傷には平手打ち,ボールなどが外耳道にあたる,爆風,頭部外傷に伴うものなどがある.
B診断
・問診,鼓膜の視診から診断は容易である.
・主な症状は難聴,耳鳴であるが,内耳障害を伴うとめまいを生じる.頭部外傷では顔面神経麻痺を合併することがある.
・穿孔部位が鼓膜の後象限の場合,耳小骨を損傷している可能性が高く,内耳障害を伴いやすい.
・外耳道に凝血塊,異物があれば吸引除去し,内視鏡,顕微鏡下に鼓膜を観察する.
C検査
・耳漏を認める場合,菌検査を行う.
・純音聴力検査を行い,骨導閾値上昇の有無を確認する.
・めまいがあれば,眼振,瘻孔症状の有無を診る.
・聴力検査で骨導閾値上昇がある,めまいが持続する,頭部外傷後の鼓膜穿孔である場合は聴器CT検査を行い,pneumolabyrinth,耳小骨離断,側頭骨骨折の有無などを調べる.
◆治療方針
治療の目的は①鼓膜穿孔の閉鎖,②難聴の改善である.耳小骨損傷のない単純鼓膜穿孔であれば,自然閉鎖が期待できるため,感染に注意し数か月の経過観察を行う.穿孔が大きいほど閉鎖しづらい.数か月経過を観察し,穿孔の閉鎖が認められない場合,手術による閉鎖を考える.
鼓膜穿孔が閉鎖すると通常は難聴も改善するが,耳小骨離断,内耳障害があると難聴は残存する.耳小骨離断では伝音難聴,内耳障害(外リンパ瘻)では感音難聴を生じる.耳小骨離断がある場合,耳小骨形成術が必要である.外リンパ瘻ではまず保存的加療を行うが,めまい,難聴の改善が乏しい場合,瘻孔