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治療のポイント
・難聴と反復する耳漏がみられる場合,本疾患を念頭におく.
・耳鏡で耳内を観察し,鼓膜穿孔を確認する.
・耳漏に対し,抗菌薬やステロイドの点耳薬を用いて治療する.
・鼓膜穿孔は自然に閉鎖しない.聴力の改善や耳漏反復の予防には手術治療を要するため,専門医を紹介する.
◆病態と診断
A病態
・反復する耳漏,難聴,鼓膜穿孔の3つを特徴とする.
・耳漏は粘膿性である.難聴は伝音難聴のことが多い.鼓膜穿孔は閉鎖傾向を認めない.
・原因として,急性中耳炎の反復による鼓膜穿孔遺残が最多であるが,外傷や医原性(鼓膜切開や鼓膜換気チューブ長期留置など)のものもある.
・急性増悪の起炎菌には黄色ブドウ球菌や緑膿菌,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,コリネバクテリウム,真菌などが多い.
B診断
・耳鏡や顕微鏡,内視鏡を用いて鼓膜穿孔を確認する.耳漏や鼓膜の肥厚,石灰化,菲薄化を伴うことがある.また,穿孔を介して中耳粘膜に浮腫や肉芽がみられることもある.
・純音聴力検査では一般に伝音難聴を認めるが,内耳に障害が及ぶと骨導が低下し混合性難聴を呈する.
・画像診断は側頭骨CTが有用で,中耳腔に粘膜肥厚や分泌物が軟部陰影として確認される.骨破壊は認めないか,耳小骨にわずかな脱灰がみられる程度である.高度の石灰化があれば慢性中耳炎の最終像である鼓室硬化症と診断する.MRIでは炎症像以外に有用な情報は得られない.
◆治療方針
保存的治療と手術治療がある.自然経過による聴力の低下について,慢性中耳炎耳は健常耳に比べ低下する速度が速いとされる.また,手術によって穿孔が閉鎖したのちの聴力自然低下は,非手術耳に比べ緩やかであるとする報告もある.保存的治療では穿孔閉鎖や長期にわたる聴力改善は望めない.したがって手術治療が理想であるが,患者の年齢や全身状態などを考慮して治療を選択する.
A保存的治療
急性増悪時には局所処置を要す