頻度 あまりみない
治療のポイント
・基本的に手術治療(鼓室形成術)が唯一の根本的治療である.
・手術を行っても再発することが少なくないため,術後も専門医による長期間の経過観察が必要である.
・小児例では進行が速い.
・放置すると顔面神経麻痺,めまい,高度難聴,頭蓋内合併症(髄膜炎,脳膿瘍など)などの合併症を起こすことがある.
◆病態と診断
A病態
・中耳真珠腫は角化扁平上皮が中耳内で増殖したもので,病理学的には腫瘍性疾患ではない.
・増殖した真珠腫が周囲の骨を破壊し,先に述べた合併症を起こす可能性がある.
・胎児期に外胚葉組織の中耳への迷入などで起こる先天性真珠腫と,鼓膜陥凹や穿孔縁から中耳内に角化扁平上皮が進展する後天性真珠腫に大別される.
・後天性真珠腫の原因には耳管機能,小児期の中耳炎の反復,乳突蜂巣の発育不全など複数の要因が関わるが,その病態はいまだ明らかではない.
・真珠腫の再発には手術時の真珠腫遺残による遺残再発と,鼓膜再陥凹による再形成再発がある.
・成長期の小児例では進行が速く,進展例が多く,再発率も高い.
B診断
・鼓膜所見が最も重要である.
・先天性真珠腫のほとんどは炎症を伴わないため,耳鼻咽喉科受診時に鼓膜から透見する白色の真珠腫塊を認め診断されるか,小学校入学前の聴力検査での難聴の指摘により診断されることがほとんどである.
・後天性真珠腫の症状は耳漏や難聴が多いが,真珠腫に特徴的なものではない.鼓膜所見としては弛緩部や後上部の陥凹,癒着,穿孔,痂皮,ポリープ,真珠腫デブリを認める.
・CT:耳小骨の骨破壊は真珠腫以外の中耳炎では起こりにくい所見である.また進行すれば,半規管瘻孔,頭蓋底の骨破壊などの所見を示すことがある.ただしCTは真珠腫の進展範囲の把握には有用だが,CTのみで真珠腫の確定診断を下すことは困難である.
・MRI:真珠腫は拡散強調画像で高信号を示し,コレステリン肉芽腫など