頻度 あまりみない
治療のポイント
・鼓膜所見正常の進行性難聴の場合,本疾患の可能性がある.
・有効な薬剤はない.
・手術加療では人工耳小骨を使用し,著明な聴力改善を得られる可能性が高い.
・手術の合併症として聾になる確率が1%程度ある.
・補聴器が効果的な症例も多い.
◆病態と診断
A病態
・通常は骨再形成が起こらない内耳骨包に骨吸収・骨形成が起こり,病変がアブミ骨に及び,その可動性が失われると伝音難聴を引き起こす.
・病変が蝸牛膜迷路内に及ぶと感音難聴も生じる.また,耳鳴を訴える患者が多い.
・遺伝的要素が強く,白人の病理学的耳硬化症は10%程度とされるが,黒人や日本人では病理学的耳硬化症は1%程度である.欧米での発症率は10万人当たり10人程度である.
・85~90%が両側発症である.
・女性に多く,妊娠中に難聴に気づいたり増悪したりすることがある.
・10歳から45歳の間に発症することが多い.
B診断
・鼓膜所見正常で,緩徐に進行する伝音難聴あるいは混合性難聴の場合,本疾患を疑う.
・ティンパノグラムはAまたはAs型を示し,耳小骨筋反射は検出されない.
・CTで内耳骨包の脱灰像を認めることがある.特に前庭窓前方や内耳道前方によく認める.蝸牛膜迷路に沿った脱灰(double ring sign)も特徴的な所見である.
◆治療方針
有効な薬剤はなく,手術成績が良好なことから手術加療が基本的な治療である.軽度難聴の場合や手術に抵抗がある場合は補聴器装用を選択することもある.
A手術加療の種類
主に行われる手術は,アブミ骨上部構造を除去して,キヌタ骨(まれにツチ骨)に締結した人工耳小骨の先を前庭窓に挿入するアブミ骨手術である.このほかに,解剖学的制約がある場合は人工中耳,高度感音難聴をきたしている場合は人工内耳の植込みを行うこともある.
Bアブミ骨手術
気導聴力閾値が40dBを超える場合が適応である.使用される人工