今日の診療
治療指針

外リンパ瘻
perilymphatic fistula
將積日出夫
(富山大学大学院教授・耳鼻咽喉科頭頸部外科学)

頻度 あまりみない(年間発生総数は約10,000人と推定)

GL急性感音難聴診療の手引き2018年版

◆病態と診断

A病態

・内耳外リンパ腔と周辺臓器の間の瘻孔が原因である.

・瘻孔は蝸牛窓,前庭窓,骨折部,奇形や炎症などによる骨迷路破壊部などの部位で生ずる.

・外傷,中耳や内耳の炎症,奇形や手術,爆風やくしゃみなどの圧外傷などが原因となる.

・聴覚症状(難聴,耳鳴,耳閉塞感),前庭症状(めまい,平衡障害)などが生ずる.

・瘻孔から外リンパが漏出すると症状が悪化,変動する.

B診断

・厚生労働省「難治性聴覚障害に関する調査研究班」による診断基準の改訂(2016年)で,外リンパ瘻は確実例と疑い例に分けられた.

・外リンパ瘻の診断は症状と検査所見に基づき行われる.外リンパ瘻確実例は,症状として外リンパ瘻の原因があり蝸牛症状や前庭症状が生じる.検査所見では,顕微鏡や内視鏡などにより中耳と内耳の間に瘻孔確認または生化学的検査にて中耳から外リンパ特異的蛋白検出のいずれかを認めた場合に診断する.症状のみを満たす場合は,疑い例とする.

・参考として次に示す症候や検査所見が認められることがある.

1)「水の流れるような耳鳴」または「水の流れる感じ」がある.

2)発症時にパチッなどという膜が破れるような音(pop音)を伴う.

・外リンパ瘻の診断には,他の原因が明らかな難聴,めまい疾患を否定する必要がある.

◆治療方針

 外リンパ瘻の原因である瘻孔は自然閉鎖する可能性があり,発症から1週間程度は安静で経過観察する.安静で改善がない,症状が悪化するなどの場合には手術的治療を行う.

A安静時の保存的治療

 難聴に対しては,副腎皮質ステロイドの投与(1週間程度で漸減)を行う.めまい発作に対しては,7%重曹水(炭酸水素ナトリウム)の注射,ジアゼパムやメトクロプラミドの筋注やジメンヒドリナートやジフェンヒドラミン・ジプロフィリンの内服を行う

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