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治療のポイント
・眼窩壁骨折において,緊急性のある病態を見逃さないことが重要である.
・眼窩壁骨折の画像所見としては線状骨折の有無,症状としては複視の有無と眼心臓反射の有無が重要である.
・鼻骨骨折については緊急性のある病態はほとんどないが,非観血的整復は2週間以内でないと施行が難しい.
◆病態と診断
A病態
・顔面外傷のなかでも,眼窩壁骨折と鼻骨骨折は比較的よく遭遇する.
・眼窩壁骨折はスポーツ・喧嘩などで眼窩に外圧がかかり,眼窩内圧が急激に上昇することで生じる.
・鼻骨骨折は鼻中隔骨折を伴うこともある.
B診断
・眼窩壁骨折においては眼科的検査と画像検査を行う.
・眼科的検査としては,自発的な眼球運動評価をまず行う.腫脹があっても検者が眼瞼を開けて検査を行う.瞳孔反射を確認し,眼球の状態も観察する.視力検査,ヘス検査も併せて行う.
・画像検査はCTを行う.骨折部位と眼窩内容物の状態を評価できる.線状骨折の有無を把握する.線状骨折は特に小児で多い.特に注意するのは外眼筋が途絶する所見(missing rectus)である.強い眼球運動障害があるのに該当する骨折が見当たらない場合は線状骨折の可能性を考慮する.同時に頭蓋底骨折や他の顔面骨折,下顎骨骨折,視神経管骨折なども確認する.
・嘔気など,眼心臓反射を疑う所見を確認する.眼科緊急の可能性のある前房出血でも嘔気を呈するので注意する.MRIも外眼筋の絞扼の判断に有用である場合がある.
・鼻骨骨折の診断についてはCTを基本に考える.鼻中隔骨折などの有無も確認する.
◆治療方針
A眼窩壁骨折
眼窩壁骨折治療の目的は眼球運動と眼球陥凹の改善である.眼窩壁骨折が判明した場合はまず鼻かみ禁止を指導する.鎮痛薬の投与を要する場合もある.また,眼窩内容の浮腫・循環障害などが考えられる場合はステロイドを適宜投与する.
1.線状骨折のある場合
複視があって,なお