今日の診療
治療指針

上咽頭癌
nasopharyngeal carcinoma(NPC)
折舘伸彦
(横浜市立大学教授・耳鼻咽喉科・頭頸部外科)

頻度 あまりみない

GL頭頸部癌診療ガイドライン2022年版

◆病態と診断

A病態

・上咽頭癌は上咽頭粘膜に生じる上皮性悪性腫瘍である.中国南部に多い.本邦は欧米とともに低発生地帯に属している.年齢は40~60歳代に多いが,10歳代の若年者にも少なからず発生する.

・ヘルペス属のEpstein-Barrウイルス(EBV)との関連が指摘されているほか,飲酒もリスクファクターとなる.

・自覚症状としては咽頭痛,咽頭異常感,鼻閉,鼻出血,鼻声,一側の耳痛,耳閉感,難聴,頭痛などが挙げられるが,これらの症状はいずれも非特異的である.頸部リンパ節に転移しやすく,上記症状がなく,頸部腫脹が初発症状となる例が約半数と言われる.また,外転神経麻痺による複視などの脳神経症状をきたすこともある.

B診断

・上咽頭に癌が発生しても,直接それを示唆する症状に乏しいことが,この癌の診断を困難にしている.上咽頭がsilent areaといわれるゆえんである.

・上咽頭の観察には軟性内視鏡(鼻咽頭ファイバースコープ)を用いる.癌は上咽頭の天蓋または側壁に浸潤性に広がり,中心部が潰瘍化して,汚い苔状のもので覆われているものが多い.肉芽様に進展するものもあるが,腫瘤状の外観をもつ例は少ない.血清学的検査では抗EBV-VCA IgA抗体高値が特徴的であり,治療効果,再発の指標にもなりうる.

・確定診断は生検材料の病理組織診断による.口腔または鼻腔から鉗子を挿入して採取する.頸部リンパ節転移やその他の症状から上咽頭癌が疑われながら,この部位が正常に見える例がある.その場合,一見正常と思われる粘膜から生検し,組織学的に癌が証明されることがある.

・亜部位は後上壁,側壁,下壁に分類される.臨床病期決定のため,頸部超音波検査,造影CT/MRI,PET-CT検査を施行し,原発巣の広がり,頸部リンパ節転移,遠隔転移の有無を評価する.病期診断は

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