今日の診療
治療指針

下咽頭癌
hypopharyngeal cancer
松本文彦
(順天堂大学主任教授・耳鼻咽喉科学)

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GL頭頸部癌診療ガイドライン2022年版

治療のポイント

・早期に発見できると経口的な切除が行え,低侵襲に治療が行える.

・進行癌では根治のために喉頭全摘(失声)を余儀なくされる可能性がある.

・癌が根治できないと,癌の進行により呼吸障害や嚥下障害が出現する.

・食道癌との重複が多く,治療の選択に難渋することがある.

◆病態と診断

A病態

・下咽頭癌は飲酒と喫煙がリスクファクターとなり,高齢男性に多い疾患である.特に少量の飲酒で顔が赤くなる人は要注意である.

・病理組織型はほとんどが扁平上皮癌で,腺癌などの組織型はまれである.

・亜部位では梨状陥凹癌が最も多い.

・比較的早期にリンパ節転移をきたし,進行癌で診断されることが多い.

B診断

・初期の症状は乏しいが,咽頭痛咽頭違和感が初期症状である.

・咽頭の症状はなく,頸部リンパ節転移による頸部腫瘤が初発症状となることも多い.

・上記症状が長く続く場合や喫煙・飲酒のリスクファクターがある症例では,喉頭ファイバースコープによる咽頭のチェックが必須である.

・下咽頭癌を疑った場合には喉頭ファイバースコープによる生検によって確定診断される.

・咽頭からの生検は咽頭反射により困難なこともあるため,全身麻酔下に生検を行うこともある.

・進行度は頸部CT・MRIなどにより評価し,腫瘍の進展範囲,頸部リンパ節転移などの有無により評価される.

・食道癌や胃癌などの重複癌の頻度が高く,上部消化管内視鏡検査は必須である.

◆治療方針

 治療後の発声機能と嚥下機能を考慮して治療法を選択する.しかし,予後の悪い疾患であるため,治療後のQOLを考慮しすぎて根治性を損なうことは避けなくてはならない.

A表在性T1,T2

 表在性の早期病変では放射線単独療法か経口切除が選択される.経口切除が可能であれば,治療を短期間で終了でき,治療後の機能も良好な経口切除を選択する.表在性であっても腫

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