今日の診療
治療指針

深頸部膿瘍
deep neck abscess
山下 勝
(鹿児島大学大学院教授・耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・迅速な診断と早期の治療開始が重要である.

・好気性菌,嫌気性菌の双方をカバーする抗菌薬(β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬剤など)の投与と切開排膿を行う.

・呼吸困難および縦隔への膿瘍進展は生命予後に直結する.

◆病態と診断

A病態

・深頸部膿瘍とは歯牙・歯周囲を含む口腔,口蓋扁桃を含む咽頭,喉頭,気管,食道,耳下腺,リンパ節,皮膚などからの炎症や外傷を契機として,頸部組織の間隙に膿瘍を形成する疾患である.

・起炎菌としては,Staphylococcus属,Streptococcus属のほか,嫌気性菌であるPrevotella属,Peptostreptococcus属,Bacteroides属などがある.気道狭窄,壊死性降下性縦隔炎,敗血症,大血管の破綻や血栓形成などにより,致死的な経過をとることがある.小児ではStaphylococcus属の感染,リンパ節炎由来のものが多く,成人ではStreptococcus属,嫌気性菌の感染,歯性感染や咽喉頭炎からの直接の菌侵入による例が多い.小児の場合,まれではあるが,先天性の瘻孔,嚢胞の感染が原因となるものが存在する.

B診断

・発熱,局所の発赤・腫脹,圧痛・疼痛を伴う際には本症を疑う.先行感染歴や糖尿病の既往,免疫抑制の有無について問診を行う.また,開口障害や呼吸困難,敗血症の有無について早急に評価を行う.

・咽喉頭所見を内視鏡検査により確認することが望ましい.

・採血により,白血球数・分画,CRP値を測定し,頸胸部(造影が望ましい)CT検査による病変の進展範囲の評価を行う.状況により,超音波検査,MRI検査などを検討する.

・穿刺可能であれば,治療開始前に無菌的に菌検査を行う.

◆治療方針

 通常,入院下での治療が必要である.

A抗菌薬投与

 細菌検査結果による薬剤感受性結果を待つ余裕がないことが多い.empiric

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?